民法等3−3 借家権(借地借家法)
借地借家法の適応を受ける建物に関する賃借権のこと
建物を借りて住む、賃貸住宅に住むことに関する規定
(例)
家の所有者A、借家人BAの家を借りているBは借家人
Bの持つ「生活に関わる家を借りる権利」が「借家権」
※借地借家法は、借家人を保護するために定められている
※夏季の貸別荘、展示会場などの明らかに一時的な使用目的の建物の賃貸借は、保護の必要が低いので、借地借家法は適応されない
※タダで貸す使用貸借も借地借家法は適応されない
定期建物賃貸借
契約の更新がなく、当初の存続期間が満了すると確定的に終了する借地権のこと
契約が終了したら必ず明け渡しとなる
契約期間を確定的に定めた上で、公正証書等の書面によって契約することが必要
契約書とは別にあらかじめ書面を交付して、契約の更新がなく、期間の満了とともに契約が終了することを借り主に説明しなければならない
貸主がこの説明を怠ったときは、その契約は定期借家としての効力はなくなり、普通借家契約となる
居住用建物の定期借家契約では、契約期間中に、借り主に転勤、療養、親族の介護など、やむを得ない事情が発生し、その住宅に住み続けることが困難となった場合には、借り主から解約の申し入れができる
※この場合、解約の申し入れの日から1ヶ月が経過すれば契約終了
※この解約権が行使できるのは、床面積が200㎡未満の住宅に居住している借り主限定
(中途解約に関して個別に特約を結ぶことは可能)
契約期間が1年以上の場合は、貸主は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、借り主に契約が終了することを通知する必要がある
(貸主と借り主が合意すれば、再契約することは可能)
定期借家制度は、平成12年3月1日から施行されている
それより以前に締結された住宅の普通借家契約は、借り主を保護する観点から、借り主と物件が変わらない場合、当分の間、定期借家契約への切り替えは認められていない
1 存続期間を定める場合
(1)存続期間
存続期間は民法の規定では→50年
借家に関してはこの民法の規定は適応されない→50年を超えることができる
(60年、70年と定めれば、そのようになる)
※1年未満の短い期間を定めた場合
期間の定めのない賃貸借契約とみなす
(定期借家の場合は覗く)
(2)契約の更新
・契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、更新拒絶の通知等がないと、従前の契約と同一の条件で更新される
(契約期間については期間の定めのない契約となる)
・契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、家主が正当事由のある更新拒絶の通知等をしたが、借家人が使い続けている場合、家主が何も異議を述べなければ、そのまま更新される
・賃貸人(家主)からの更新拒絶には正当事由が必要
(借家人を保護するため)
2 存続期間を定めない場合
契約期間が決まっていない場合は、お互いからの解約申し入れによって終了する
・家主からの申し入れ
正当事由、6ヶ月の猶予期間が必要
・借家人からの申し入れ
民法が適応されるので、正当事由は不要、猶予期間は3ヶ月あれば良い
借地の場合、借地上の建物の借地権の譲渡・転貸について、所有者に代わる裁判所の許可の制度があったが、借家権にはそのような制度は無い
必ず、所有者(家主/賃貸人)の承諾が必要
※建物や家の場合、丁寧に扱うか雑に扱うか、借り手によって使用方法が異なるため、
家主が承諾したく無いものを、裁判所が代わって承諾するのは、家主に不利益だから
(例)
家の所有者A(賃貸人)
Aの家を借りているB(賃借人)
Bから家を借りたC(転借人)
AB間の賃貸借が期間満了や解約申し入れで終了する場合
転借人Cを保護する観点から、賃貸人Aは転借人Cに対して通知をしなければならない
AがCに対する通知をしなかった場合は、Cは家を出て行かなくても良い
AがCに通知をすると、6ヶ月後に、BC間の転貸借契約が終了する
・借家人(転借人も含む)が、家主の承諾を得て、エアコンなどの造作を取り付けた場合
借家契約が期間満了または解約申し入れによって終了するとき
借家人は家主に対して、造作したものを時価で買い取って欲しいと請求することができる
これが造作買取請求権
※定期建物賃貸借契約でもこの造作買取請求権は認められている
※造作買取請求権が認められるのは、期間満了と解約にでの終了に限定されている
※債務不履行で終了する場合は、造作買取請求権は認められない
??なぜ造作買取請求権が認められているのか??
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借家人が投下した資本の回収のため
造作買取請求権を排除する特約は有効
もし賃借人が造作を取り付けたとしても、家主はそれを買い取りませんということ
??造作買取請求権を排除する特約は、借り手に不利となるのに、なぜ有効なのか??
⬇︎
造作買取請求権があるせいで家主が承諾してくれず、借り手が造作をつけられないことになると、それはかえって借り手の不都合になるため
(エアコンを設置できないなど、生活が不便になる)
※定期建物賃貸借契約でもこの造作買取請求権排除の特約の設定は認められている
A所有の家をBが賃借している
Aはこの家をCに売却した
Cはこの家に自ら居住したいと考えている
Bはどうすれば、Cに対して賃借権を対抗できるか??
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Bは家の引き渡しを受けていれば、Cに対抗できる
すでに引き渡しを受けて住んでいる状況であれば、退去しなくても良い
・BはAから土地を借り、そこに家を建てている
Bがその家をCに賃貸した場合、土地の利用権の譲渡・転貸になるか??
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土地の利用権の譲渡・転貸にはあたらない
※Cは単に家を借りて住むだけであり、借地人Bと別に独立して土地を使用する訳では無い
・Bの借地権が存続期間の終了によって消滅するとき、Cは退去しなければならないか??
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・Cが期間満了の事実を、その1年前までに知っていた場合
明け渡しをしなければならない
・Cが期間満了の事実を、その1年前までに知らなかった場合
Cは裁判所に請求をして、Cがそのことを知った日から1年以内の範囲で、土地の明け渡しに相当の期限を得ることができる
(引っ越しをするための猶予を得ることができる)
※Bの借地権が定期借地権であった場合でも、Cは上記と同様のことができる
・借家人が、相続人なしに死亡した場合
事実上の夫婦or養親子にあった同居者は、借家人の権利義務関係を引き継ぐ
※内縁の妻のような同居人を保護するため
※これに反する特約でも有効
(内縁の妻や養親子には権利義務を引き継がないという特約)
・内縁の妻などが、家を引き継がずに出て行きたい場合
内縁の妻などは、相続人なしに借家人が死亡したことを知った時から1ヶ月以内に、
家主に対して反対の意思表示をすれば、承継しない
契約は、公序良俗に反しない限りは原則自由だが、どんな内容でも売主買主間で自由に取り決めできるというわけでは無い
・任意規定
売主買主間で任意に取り決めた事項を、特約で契約すること
・強行規定
不動産取引において、知識の差は大きい
プロである不動産業者が売主、一般消費者が買主となる契約の場合、
売主に有利となる契約を、買主が契約書に記名押印したから全て有効だとすると、買主に不利益が生じる可能性がある
これを防ぐために、法律に反する契約は無効となる
この仕組みが強行規定
・不動産取引での強行規定
宅建業法や借地等での契約であれば借地借家法で強行規定の条項が定められている
宅建業法や借地借家法は特別法であり、その条文の中の規定に反する取り決めは無効とされている条項がある
※定期建物賃貸借の更新規定の排除を除く
※存続期間、更新、譲渡・転貸、借家権の対抗要件、借地上の建物の賃貸借などに関する借地借家法の定めよりも借家人に不利な特約は無効
※造作買取請求権は強行規定ではない
※居住用建物の賃貸借の承継も強行規定ではない
・更新がない借家権
・利用目的の制限もない
※更新がないので、一定期間がたてば確実に出て行ってもらえる、家主は貸しやすいし、家賃の変更もしやすい
1 定期建物借地権
(1)
期間の定めが必要
期間は20年でも1年未満でもOK
(普通の借家契約と異なり、6ヶ月と決めれば6ヶ月になるということ)
(2)
契約は必ず書面で行う
更新がないという重大な決まりがあるため、行き違いのないように書面が必要
※公正証書である必要はない
(3)
賃貸人は、契約を締結するにあたって「更新がなく一定期間が経てば借家契約が終わる旨を記載した書面」を使って説明する必要がある
この書面がない場合は、「更新がない」旨の定めが無効となる
=更新が認められる普通の借家契約になる
※この書面は契約書とは別で、独立した書面で用意しなければならない
※借家契約全体が無効になるのではないことに注意
※更新がないという契約が無効になり、更新が認めらるようになる
(4)
契約の終了にあたっては、家主から通知をしなければならない
期間が1年以上の定期建物賃借権の場合は、1年前から6ヶ月前までの間に家主の方から通知をする
この通知をしなければ、家主は終了を対抗できない
※賃借人が新しく住む家を探す必要があるため、期間が設定されている
(5)
賃借人が、転勤や療養などのやむを得ない事情で退去する時
・床面積が200㎡未満の居住用建物であること
・やむを得ない事情で借家を本拠地として使用できないこと
この2点に該当すれば、賃借人の方から中途解約をすることができる
(6)
(4)と(5)に反する内容で、借家人に不利な特約は無効
2 取り壊し予定建物の賃貸借
契約や法令によって、一定期間が経てば取り壊される予定のある建物の賃貸借
(契約→定期借地上の家など)
(法令→土地区画整理事業の区域内の家など)
・取り壊す時に契約が終了する
・取り壊す事由を記載した書面で締結する
地代や家賃を増額する、減額する請求については、借地と借家の両方でほぼ同じ内容
(1)経済事情の変動で土地の価格が不相応になった場合
当事者は、将来に向かって、地代や家賃の増額や減額を請求することができる
・一定期間増額しない旨の特約がある場合
その期間は増額の請求はできない
・一定期間減額しない旨の特約がある場合
減額の請求は可能
(2)増額、減額の金額の決定
増額請求
・家賃1ヶ月10万円の契約をしている場合
家主→15万円に増額したい
借り手→12万円が妥当だろう
この場合、借主は12万円を支払えば足りる
しかしその後の裁判で15万円と決定した場合は、
増額請求が行われた時点以降分の家賃が増額されることになる
・12万円しか支払っていなかった場合に借り手が支払う金額
1ヶ月あたりの不足分3万円×月
年1割の利息
この2つを合わせて支払う
※減額請求の場合は、増額請求の逆
※家主が借り手に返還する