民法等2−9 弁済と相殺
契約の取り消し
契約の解除
時効
債権は消滅時効にかかるので、時効によっても消滅する
弁済
債務の履行が完了し、債権は目的を達成したので消滅する
代物弁済
債務の内容として指定されている給付の代わりに、他の給付をすることによって、債権を消滅させる行為
100万円の金銭債務を負っている債務者が、100万円の代わりに100万円相当の壷を債権者に給付することで弁済をするなど
供託
弁済者が、債権者のために、弁済の目的物を国家の一機関に寄託することによって、債務を免れる行為
更改
債権の要素である債権者・債務者・債権の目的物いずれかを変更することによって、
古い債権を消滅させ、同時に新たな債権を成立させる契約のこと
500万円の支払債権の目的物は500万円の金銭だが、
この目的物を500万円相当の壷に変更させることによって、
500万円の金銭債権を消滅させると同時に、
500万円相当の壷を引き渡してもらう債権を成立させる
※代物弁済→現実に代わりの給付が行われるの
※更改→内容を変えた新たな債権が成立するにとどまる
免除
債権者が、債務者のために、何の見返りもなく債権を消滅させる行為のこと
免除は、債務者の承諾を得ることなく単独で行うことができる
混同
債権と債務が同一人に帰属することで、両者を存続させておく必要がなくなり、債権・債務がともに消滅すること
500万円の債権者Aが債務者Bの父であり、後にAが死亡し、Bが唯一の相続人としてAの地位を相続した場合、Bは自己の債権者ともなり、自分に対して請求して自分に対して払うという状態になるので、債権と債務を存続させておく必要がなくなり、債権と債務は消滅する
相殺
二人が互いに同種の債権を有している場合において、その2つの債権を対当額において消滅させる意思表示のこと
弁済→債務の履行と同じ
お金を借りた者が「借りたお金を返すこと」は弁済
土地の売買契約をした売主が「土地を引渡すこと」も弁済
弁済できる人
本来は債務者がするもの
しかし、債務者以外の第三者でも弁済は可能
・第三者の弁済が認められない場合
1 債務の性質が、第三者の弁済を許さない場合(歌手のコンサートなど)
2 当事者間で第三者の弁済は不可の特約がある場合
3 弁済することにつき、正当な利益を有しない第三者による弁済で、一定の場合
・弁済することにつき、正当な利益を有しない第三者による弁済で、一定の場合とは
正当な利益を有しない第三者 → 友人や親族など
1 債務者の意思に反するとき
(債務者の意思に反すると、債権者が知らなかった場合、その弁済は有効)
2 債権者の意思に反するとき
(第三者が債務者から委託を受けて弁済をする場合、そのことを債権者が知っていたときは、その弁済は有効)
※債権者には拒絶権がある
見ず知らずの他人からの弁済を拒絶したい人もいるので、認められている
債務者の友人や親族が弁済をする場合は、債権者が承諾すればOK
(例)
債権者Aは債務者Bに100万円を貸している
??正当な利益を有しない第三者Cが債務者Bの代わりに100万円を弁済できるか??
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債務者Bの意思に反する場合は、Cは弁済をできない
??Cによる弁済が、債務者Bの意思に反していると知らずに、債権者AがCからの弁済を受領した場合、この弁済はどうなるか??
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債権者Aがそれを知らずに受領した場合、弁済は有効
??抵当権が設定されている不動産を買った第三取得者は、正当な利益を有する第三者と言えるか??
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言える
債務を弁済すれば、抵当権は付従性によって消滅し、抵当権は実行されないため
(物上保証人、後順位抵当権者なども正当な権利を有する第三者)
(借地上に借地権者が建てた建物を借りている人も、家主が支払うべき敷地のちだいの弁済については、正当な利益/旧法上の利害関係があるとされている)
弁済の相手方
・受領権者
弁済を受ける、返してもらう側の人
債権者やその代理人など
法令の規定または当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者
・受領権者が弁済を受けたら
当然に債権は消滅する
・受領権者としての外観を有する者に対する弁済
受領権者としての外観を有する者とは、、、
受領権者ではないが、社会通念に照らしてそう見える者
(他人の印鑑と通帳をを持っている)
(受領証書/領収書を持っている)
そうした者に対して弁済がなされたとき、その弁済をした者が善意無過失であれば、その弁済は有効
(具体例)
債権者Aの通帳と印鑑を持参したC
債務者B銀行からお金を引き出した
このときB銀行が善意無過失の場合は、その弁済は有効
B銀行は債権者Aに対して二重に弁済する必要は無い
弁済の提供
弁済の提供とは、、、
債務者が自分の債務を履行するために必要な準備をして 債務者に対してその協力を求めること
(例)
不動産の売買の場合
・売主は土地を「引き渡す義務」と「所有権移転手続きを行う義務」を負う
・買主は「代金を支払う義務」を負う
・買主が売主に対して、「お金を用意したから受け取ってくれっ」とお金を持参して 売主の家まで行って言った場合、売主がお金を受け取らなくても 買主は弁済を提供したことになる
弁済の提供の方法2種類
1 現実の提供(債務に従って、現実に提供すること)
持参債務の場合、債務者は目的物を準備し、 それを持参して債権者の所に赴く必要がある
金銭債務は持参債務(持参しなければならない)
弁済は債務の本旨に従ったものでなければならず、一部の提供では弁済の提供にはならない
※自分振り出しの小切手→支払いの確実性がないため不可(現実の提供にはならない)
2 口頭の提供(弁済の準備をして受領を催告すること)
この口頭の提供ができるのは、
① 債権者が予め受領を拒んでいる場合
② 債務の履行について債権者の行為を要する場
弁済の充当
数個の金銭債権がある場合に、債務者からその 全額に足りない支払がなされた場合、どの債権について弁済がなされたものとするかが、弁済の充当の問題
(例)
債権者A
債務者B
・BはAから1000万円借りている(貸金債務を負っている)
・BはAに500万円の代金支払い債務を負っている
??Bが800万円を弁済したとき、この800万円はどちらの債務の弁済になるか??
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・合意充当(AとBの合意によって充当)
当事者があらかじめどのように充当するのかを契約で定めていれば、それに従って充当される
合意充当が最優先
・指定充当
当事者間に合意がない場合、民法は両当事者の立場を考慮して公平の観点から、当事者の指定による充当(民法488条)を定めている
弁済者Bまたは弁済受領者Aの指定により、充当先を決める
※充当する順番は「費用→利息→元本」
・法定充当
法律の定めに従った充当方法
※充当する順番は「費用→利息→元本」
弁済による代位
弁済による代位とは、、、
保証人Cが債権者Aに弁済した場合、保証人Cは主たる債務者Bに対して求償できる
保証人の求償権を実行可能なものにするために、弁済をした保証人Cが債権者Aに取って代わる(保証人Cが債権者Aと同じ位置に立つ)こと
債務者Bのために弁済をしたものは、債権者Aの承諾なしに債権者に代位する
債権者Aが債務者Bに対して有していた債権や抵当権などを、保証人Cが実行できるようになる
1 正当な利益を有する者が弁済した場合
債権者に代位し、債務者に対して権利を実行できる
保証人は、弁済をしないと自身が強制執行などを受ける可能性があり、弁済をするについて正当な利益を有しているので、代位する
2 正当な利益を有する者以外の者が弁済した場合
この場合も、第三者は債権者に代位する
ただし、債権者から債務者への通知か、債務者の承諾がなければ、債務者に対抗できない
代位する人がいる旨を債務者に知らせなければならない
弁済する場所
契約(特約)で定めれば、その場所が弁済場所になる
弁済の場所の定めがない場合で「特定物の引渡し」の場合は、債権が発生した場所が弁済場所となる
特定物とは、、、
「特定の絵」などが特定物に当たる
この場合、契約場所まで取りに行くことになる
「特定物の引渡し以外」の場合、、、
当事者に別段の意思表示がないときは、債権者の現在の住所で行う
借りたお金を返す場合、債権者の現住所まで届けるのが原則
二人が互いに同種の債権を有している場合において、その2つの債権を対当額において消滅させる意思表示のこと
(例)
AはBに1000万円を貸している(AはBに対して1000万円の貸金債権を有している)
BはAに自己所有の家を売却し、その代金1000万円の代金債権を有している
??BはAに1000万円、AはBに1000万円、それぞれ現実に支払わなければならない??
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お互いの持つ貸金債務と代金債務を帳消しにすれば、現実に1000万円を提供しなくても良い
帳消しにした方が簡便なため、相殺が認められている
自動債権と受動債権
上記の例でAからBに相殺を持ちかけた場合
AがBに対して持っている貸金債権は、自動債権となる
BがAに対して持っている代金債権は、受動債権となる
(誰が相殺するかによって自動債権か受動債権かが変わる)
相殺の要件
1 相殺適状にあること
自動債権と受動債権の両方が相殺できる状態(相殺適状)にあること
2 両者が対立した同種の目的の債務を負担していること
AがBに対して債権を持ち、逆にBもAに対して債権を持っていて、その両方の債権がどちらも金銭債権であること
3 それぞれの債権が有効に存在していること
時効が完成した債権でも、時効完成前に相殺適状になっていれば相殺できる
(例)
Aの債権の時効が完成した場合でも、Aとしては一旦は相殺適状の状態にあったのだから、自動的に帳消しになったと考えるのが自然
Aの期待を保護するため、例外的に、時効完成後の相殺が認められている
4 両方の債務が弁済期にあること
ただし、相殺しようとする者は自己の債務(受働債権)については期限の利益を放棄することができるため、自分が相手に対して持っている債務(自働債権)さえ弁済期にあれば問題ない
※期限の利益を放棄するとは、、、
相手が自分に対し、返済日がきていなくても返済を要求できるようになること
5 債務の性質が相殺を許すものであること
自動債権に抗弁権がついている場合は相殺できない
相殺を許すと、抗弁を主張できるという相手方の利益を奪うことになるため
5 当事者間に相殺禁止特約がないこと
相殺適状にあっても、相殺できない場合2つ
(1)受動債権が一定の不法行為等によって発生した債権である場合
・悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
(損害を与える意欲がある悪意)
・人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務
(例)
AはBにお金を貸している
AはBを自動車ではねて怪我を負わせてしまった
AはBに借金を帳消しにするいといって、責任を逃れようとした
→被害者Bの救済を図るために、このような場合の相殺は禁じられている
(2)自働債権が受働債権の差し押さえ後に取得された債権である場合
差し押さえの実効性を確保するために相殺が禁止されている
差し押さえの前に取得された自働債権なら、相殺できる
※差し押さえ後に債権を取得した場合でも、それが差し押さえ前の原因に基づいて生じた債権である場合は、原則として相殺できる
相殺の方法と効力
・相殺には、条件や期限をつけることはできない
??なぜか??
⬇︎
相殺は、相手方に対する一方的な意思表示によって行われ、その効力は相殺適状になった時に遡って生じる
相殺は一方的な意思表示で行われるため、それに条件をつけてしまうと相手方の地位が不安定になってしまう
そもそも相殺の効果は相殺適状時に遡って生じるので、期限をつける意味がない