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過去問 代理

代理に関する次の記述が民法の規定及び判例において、正しいか否かを答えよ。

不動産の売買契約に関して、同一人物が売主及び買主の双方の代理人となった場合であっても、売主及び買主の双方があらかじめ承諾をしているときには、当該売買契約の効果は両当事者に有効に帰属する。

 

 

(正)

原則として、当事者双方の代理人となることはできません。ただし、本人が事前に許可をした場合、または、債務の履行を行う場合の代理行為の結果は当事者双方に帰属します。

 

民法108条1項
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

AがBの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合に関する次の記述が民法の規定及び判例において、正しいか否かを答えよ。

Aが無権代理人であってDとの間で売買契約を締結した後に、Bの死亡によりAが単独でBを相続した場合、Dは甲土地の所有権を当然に取得する。

 

 

(正)

 本人の死亡により無権代理人が本人を単独で相続した場合、無権代理行為の追認を拒絶することはできないため、無権代理行為は当然に有効となります(最判昭40.6.18)

Bを単独で相続したAは無権代理行為を拒絶できないため、代理行為は有効となり、Dは甲土地の所有権を取得します。

 

 最判昭40.6.18
無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。

 

 

AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。

この場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bが本件売買契約を追認しない間は、Cはこの契約を取り消すことができる。

ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権がないことを知っていた場合は取り消せない。

 

 

(正)

 無権代理人の相手方は、善意の場合、本人が追認をしない間は契約を取り消すことが可能です(民法115条)。
Aは無権代理人ですから、甲土地の所有者であるBが追認する前であれば、善意のCは当該契約を取り消すことができます。しかし、契約時に悪意だった場合には契約を取り消せません。

 

B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合に関する次の記述が民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが無権代理人であって、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合には、Bは追認を拒絶できるが、CがAの無権代理につき善意無過失であれば、CはBに対して損害賠償を請求することができる。 

 

(正)

 本人が無権代理人を単独で相続した場合、本人は追認拒絶をすることが可能です(最判昭37.4.20)。

ただし、本人は無権代理人の権利義務も同時に相続するため、無権代理行為の相手方が善意無過失であれば損害賠償の責任を負います。

 

 民法117条1項
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

 

AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を令和2年7月1日に授与した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。

 

 

(誤)

同一の法律行為について双方の代理人としてした行為は、双方代理に当たり、無権代理人がした行為であるとみなされます。損害の有無を問いません。

 

 民法108条1項
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

 

AがA所有の土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bが自らを「売主Aの代理人B」と表示して買主Dとの間で締結した売買契約について、Bが未成年であったとしても、AはBが未成年であることを理由に取り消すことはできない。

 

 

(正)

未成年者などの制限行為能力者であっても、代理人になることは可能です(民法102条)。

よって、Bが未成年であること理由に取り消すことはできません。 

 

 民法102条
制限行為能力者代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人としてした行為については、この限りでない。

 

代理に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

法人について即時取得の成否が問題となる場合、当該法人の代表機関が代理人によって取引を行ったのであれば、即時取得の要件である善意・無過失の有無は、当該代理人を基準にして判断される。

 

(正)

 意思表示に関する瑕疵等については、原則として代理人を基準にして判断されます(民法101条1項)

動産の即時取得は占有を始めた者の善意・無過失が要件となっているので、代理人が善意・無過失であるか否かによって即時取得の効力が判断されます(民法192条)

 

民法101条1項
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

 

民法192条
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

 

 

AがA所有の甲土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。なお、表見代理は成立しないものとする。

18歳であるBがAの代理人として甲土地をCに売却した後で、Bが18歳であることをCが知った場合には、CはBが未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことができる。

 

 

(誤)

 行為能力者でなくても代理人にはなれます(民法102条)。

未成年者であっても有効な代理人であるため、Cは、Bが未成年であることを理由に売買契約を取り消すことはできません。

 

 民法102条
制限行為能力者代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人としてした行為については、この限りでない。

 

 

Aは不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。

この場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bが、Bの友人Cを復代理人として選任することにつき、Aの許諾を得たときは、Bはその選任に関し過失があったとしても、Aに対し責任を負わない。

 

 

(誤)

 任意代理人が復代理人を選任した場合の本人に対する責任は、本人と任意代理人との委任契約に関する債務不履行の一般原則に従って判断されます。よって、本人の許諾がある場合でも、復代理人の選任・監督につき善管注意義務を怠った等の過失があれば、Bは債務不履行責任を負います。

 

民法の規定及び判例並びに下記判決文において正しいか否かを答えよ。

(判決文)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。

無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 

 

(正)

無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずることとなります。なお、この場合でも第三者の権利を害することはできません。 

 

 民法116条
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を令和2年7月1日に授与した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AがBに授与した代理権が消滅した後、BがAの代理人と称して、甲土地をEに売却した場合、AがEに対して甲土地を引き渡す責任を負うことはない。

 

(誤)

 代理人を有していた人(元代理人)が、代理権消滅後にその代理権の対象行為を第三者との間でした場合、第三者が代理行為の消滅につき善意無過失であるときは、その代理効果は本人に帰属します(民法112条1項)。よって、Eが善意無過失のときには、AはEに甲土地を引き渡す責任を負うことがあります。

 

民法112条1項
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

 

 Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。

 

(誤)

 Bは、A及びC両方の代理人になりますから、双方代理行為になります。原則として双方の代理人となることはできませんが、本人からの許諾があるときには双方代理をすることも可能です(民法108条1項)。
本肢の場合、A及びCの許諾があれば双方代理は有効になります。

 

民法108条1項
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

 代理に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができる。

 

(正)

夫婦間では、代理権授与契約は不要です。したがって、夫婦のどちらかが、日常家事に関して法律行為を行なった場合は、その法律行為により生じた債務は連帯して負うことになります。

 

民法761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない

 

 

Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。

 

 

(誤)

 代理人が依頼主のためであることを示さなかった場合でも、代理人の相手方がそのことを知っていた場合は、その売買契約の効果は本人に帰属します(民法100条)。

よって、Cが、売主はBであることを知っているときには、売買契約はBC間で成立します。

 

民法100条
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

 

B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが無権代理人であっても、Bの死亡によりAがDとともにBを共同相続した場合には、Dが追認を拒絶していても、Aの相続分に相当する部分についての売買契約は、相続開始と同時に有効となる。

 

 

(誤)

無権代理人が本人を共同相続した場合は、共同相続人全員がこれを追認した場合に限り、無権代理行為は有効となります。一人または数人が追認をしたとしても、当該部分のみ有効とはなりません

 

最判平5.1.21
無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。

 

Aは不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。

この場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bが復代理人Eを適法に選任したときは、EはAに対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負うため、Bの代理権は消滅する。

 

 

(誤)

 復代理人を選任した場合であっても、代理人の代理権は消滅しません。復代理人の選任後も、BはAの代理権を有したままです。

 

 

AがA所有の甲土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述が、民法の規定において、正しいか否かを答えよ。なお、表見代理は成立しないものとする。

Bが死亡しても、Bの相続人はAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。

 

 

(誤)

代理人が死亡した時点で代理権が消滅するため代理権の相続は生じません。よって、相続人はAを代理して土地を売却することはできません(民法111条1項) 

 

 

AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。
しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。
この場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

BがAに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Aの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がAにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

 

 

(正)

 代理人が権限外の行為をした場合でも、相手方に代理権があると信ずべき正当な理由がある場合は、その代理行為は有効となります(民法110条)。
Bが行った売買契約は越権行為ですが、代理権がAにあるとCが信ずべき正当な理由がある場合には、表見代理が成立し、BC間での売買契約は有効となります。

 

民法110条
前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 

AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。

しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。

この場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

BがCに対し、Aは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことをCが過失により知らなかったときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

 

 

(誤)

 BC間で売買契約が成立するためには表見代理が成立する必要がありますが、表見代理は相手方(C)が善意無過失の場合のみ成立します民法109条1項)。
本肢では、BはAに代理権を与えたと表示していますが、Cは過失により知らなかった、すなわち善意につき過失があるので、表見代理は成立しません。

 

民法109条1項
三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

 

AがBの代理人として、Cとの間でB所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bが、AにB所有土地を担保として、借金をすることしか頼んでいない場合、CがAに土地売却の代理権があると信じ、それに正当の事由があっても、BC間に売買契約は成立しない。

 

(誤)

 代理人が代理権を付与された行為以外を行った場合、表見代理が成立するか否かによって効果が変わります。第三者代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは表見代理が成立するので、AとCの売買契約は有効に成立します。

 

 民法110条
前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 

 

Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AがBに代理権を授与した後にBが後見開始の審判を受け、その後に本件契約が締結された場合、Bによる本件契約の締結は無権代理行為となる。 

 

 

(正)

 代理人が後見開始の審判を受けた場合、その時点で代理権は消滅します

 民法111条1項
代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。

 

AがA所有の甲土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。なお、表見代理は成立しないものとする。

Bが売主Aの代理人であると同時に買主Dの代理人としてAD間で売買契約を締結しても、あらかじめ、A及びDの承諾を受けていれば、この売買契約は有効である。 

 

(正)

 原則として双方代理は禁止されていますが、当事者双方が許諾した行為や債務の履行をするだけであれば双方代理も認められます民法108条)。
本肢の場合、Bは、AとDからの承諾を受けていれば、双方代理による売買契約は有効になります。

 

 民法108条
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

AがBに無断でCと売買契約をしたが、Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも、BがAの行為を追認すれば、DはCに所有権取得を対抗できなくなる。

 

 

(誤)

 Aが代理して成立させた売買契約の効果はBに帰属し、BC間で売買契約が成立します。

また、BD間の売買契約も有効に成立するため二重譲渡と考えることができます。

二重譲渡は対抗関係になるので、売買契約の先後を問わず先に移転登記を備えた方が所有権を主張できます。

よって、先に登記を備えたDはCに所有権を対抗できます。

 

 

 

代理に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。

 

 

(正)

 委任による代理人(任意代理)の場合、本人から許諾を得たとき及びやむを得ない事情があるときには復代理人代理人代理人)を選任することができます

 

民法104条
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

 

 

Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bは、Aの同意がなければ、この土地の買主になることができない。

 

 

(正)

 同一の法律行為について、当事者の一方が他方の代理人となること(自己契約)は禁止されています。本人の利益と代理人の利益が相反し、本人の不利益になる可能性があるからです。ただし、本人の許諾があるとき、債務の履行であるときはOKです。

よって、土地の売却を依頼されている代理人Bは、自らその土地の買主となることはできません。

 

民法108条1項
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

 Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bは、自己の責任により、自由に復代理人を選任することができる。

 

(誤)

 任意代理人(委任による代理人)は、依頼者本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事情があるときでなければ復代理人を選任できません(民法104条)。本肢は「自由に選任できる」としているので誤りです。

 

民法104条
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

 

【法廷代理人の復代理人の選任】 

いつでも選任できる

代理人は、本人に対して全ての責任を負う

※やむおえない事由がある時は、選任・監督のみに責任を負う

 

任意代理人の復代理人の選任】

本人の許諾を得たときと、やむおえない事由がある時のみ選任できる

代理人は本人に対して選任・監督の責任を負う

 

 

 AがA所有の甲土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。なお、表見代理は成立しないものとする。

Aが死亡した後であっても、BがAの死亡を知らず、かつ、知らないことにつき過失がない場合には、BはAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。

 

(誤)

代理権は、以下に該当した場合には自動的に消滅します(民法111条1項)。

  1. 本人・代理人の死亡
  2. 代理人が破産・後見開始

Aの死亡につき善意無過失であったとしても、Bの代理権は消滅します。

よって、Bは無権代理人になり、甲土地の売却は無権行為になります。 

 

 

 

Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bは未成年者であっても、Aが成年に達した者であれば、Bの法定代理人の同意又は許可を得ることなく、Aに売買の代理権を与えて、Cとの間で土地の売買契約を締結することができ、この契約を取り消すことはできない。

 

 

(誤)

 制限行為能力者であっても代理人となることは認められます。

しかし、未成年者が代理契約をするときには法定代理人の同意が必要なので、法定代理人の同意なくAに代理権を与えることはできません(民法5条1項)

最後の「この契約を取り消すことができない」という記述は適切です(民法102条)

 

民法5条1項
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

 

民法102条
制限行為能力者代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。

ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人としてした行為については、この限りでない。

 

A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

なお、表見代理は成立しないものとする。

Aの死亡により、BがAの唯一の相続人として相続した場合、Bは、Aの追認拒絶権を相続するので、自らの無権代理行為の追認を拒絶することができる。

 

(誤)

 無権代理人が本人を相続した場合には、信義誠実の原則に違反するため、本人の有していた追認拒絶権を行使することはできません。

 

最判昭40.6.18
無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたった場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。

 

代理に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受領する権限を有する。 

 

(正)

 契約の相手方から取り消しの意思表示を受領することも代理権の範囲内とされています(最判昭34.2.13)

 

最判昭34.2.13
売買契約締結の代理権を授与された者は、特段の事情がないかぎり、相手方から、旧民法第八八七条に基く当該売買契約取消の意思表示を受ける権限をも有するものと解するのが相当である。

 

Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bは、Aに対してCとの間の売買契約を委任したが、Aが、DをCと勘違いした要素の錯誤によってDとの間で契約した場合、Aに重過失がなければ、この契約は取り消すことができる。

 

(正)

 代理人が勘違いした要素の錯誤によって相手方との間で契約した場合、代理人に重過失がなければ、この契約は取り消すことができます(民法101条1項)

代理人Aの行為を基準に考えて、権利関係に影響を与えるようなことが問題になったとき、本人であるBであっても取り消しが可能になります。

 

 民法101条1項
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

 

B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合に関する次の記述のが、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが無権代理人である場合、CはBに対して相当の期間を定めて、その期間内に追認するか否かを催告することができ、Bが期間内に確答をしない場合には、追認とみなされ本件売買契約は有効となる。 

 

(正)

 無権代理行為があった場合、無権代理行為の相手方は、本人に対し相当の期間を定めて売買契約を追認するか否かを催告できます。

本人が期間内に確答をしないときは追認を拒絶したものとみなされます民法114条)。本肢は「追認とみなされ」としているので誤りです。

 

民法114条
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。

この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

 

代理に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、

特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するが、本人に対する受領物引渡義務は消滅しない。 

 

(誤)

代理人は、代理人だけなく本人に対しても引き渡し義務を負うこととなります(民法106条2項)。
しかし、判例では代理人に受領物(ここでは金銭)を引き渡した場合は、本人に対する引き渡し義務は消滅するとしています。 

 

 民法106条2項
代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

 

AがBの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、AがCの代理人となってBC間の売買契約を締結したときは、Cは甲土地の所有権を当然に取得する。

 

(誤)

 本人の許諾なく当事者双方の代理人となってした行為は、無権代理行為とみなされます(民法108条1項)

よって、CはBの追認がなければ甲土地を当然に取得することはできません(民法103条1項)

 

民法108条1項
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

民法103条1項
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 

 

Aは不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。

この場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bは、やむを得ない事由があるときは、Aの許諾を得なくとも、復代理人を選任することができる。 

 

(誤)

 任意代理人の場合、やむを得ない事由があるとき、または本人の許諾を得た場合に限り復代理人を選任することができます

※2つの条件のうち、、どちらかを満たしていればOK

 

 民法104条
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

 

Aは不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。

この場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bが、Aの許諾及び指名に基づき、Dを復代理人として選任したときは、Bは、Dの不誠実さを見抜けなかったことに過失があった場合でも、Aに対し責任を負わない。 

 

(誤)

任意代理人が復代理人を選任した場合の本人に対する責任は、本人と任意代理人との委任契約に関する債務不履行の一般原則に従って判断されます。

よって、本人の指名による場合でも、復代理人の選任・監督につき善管注意義務を怠った等の過失があれば、Bは債務不履行責任を負います。

 

民法改正により「過失の場合の免責」がなくなった 。

 

民法改正により変更になった部分です。
以前は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、復代理人が不適任又は不誠実であることにつき悪意である場合にのみ責任を負うとしていました。つまり、過失の場合には免責されていました。

 

 AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。

しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。

この場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bが本件売買契約を追認しない場合、Aは、Cの選択に従い、Cに対して契約履行又は損害賠償の責任を負う。

ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを知っていた場合は責任を負わない。

 

(正)

 相手方が悪意または善意有過失のときを除いて、無権代理人は相手方の選択に従い、履行または損害賠償の責任を負います(民法117条)。
よって、Cは無権代理人のAに対して、契約履行または損害賠償を追及することができます。ただし、Bが代理権を有しないことをCが契約のとき知っていた(悪意の)場合は無権代理人の責任は免除されます。

 

民法117条
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

 

 

代理に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

未成年が代理人となって締結した契約の効果は、当該行為を行うにつき当該未成年者の法定代理人による同意がなければ、有効に本人に帰属しない。

 

 

(誤)

 未成年であっても、法定代理人の同意なしに有効な代理行為を行うことができます。

また、この効果は代理人に帰属します(民法102条)。

 

民法102条
制限行為能力者代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。

ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人としてした行為については、この限りでない。

 

 

代理に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

法定代理人は、やむを得ない事由がなくとも、復代理人を選任することができる。

 

 

(正)

 法定代理人は、やむを得ない事由がなくても復代理人の選任が可能です(民法105条)。

 

民法105条
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。

この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

 

 Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さらにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。

 

(誤)

委任による代理人任意代理人)は、

①本人の許諾を得たとき、または②やむを得ない事由があるときに限り復代理人を選任できます(民法104条)。

本肢のケースは「やむを得ない事情」があるので、依頼主Bの承諾がなくても復代理人を選任することが可能です。

 

民法104条
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。 

 

 

Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが、買主Dから虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、Bがその事情を知りつつAに対してDとの契約を指図したものであるときには、BからDに対する詐欺による取消はできない。

 

 

(正)

意思表示における瑕疵の有無は代理人を基準に決定されます。

しかし、本人が自ら知っていた事情について、代理人が知らなかったことを主張することはできません。

本肢では依頼主Bが詐欺の事実を知っていたのですから、代理人Aの意思表示が詐欺によるものであることを主張することは許されず、Dとの売買契約の取消はできません(民法101条3項)。

 

民法101条3項
特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。

本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

 

 

AがBの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、A自らが買主となって売買契約を締結したときは、Aは甲土地の所有権を当然に取得する。

 

 

(誤)

 代理人が自ら買主となるように、本人と代理人の利益が相反する行為が行われた場合、無権代理行為とみなされます(民法108条2項)。

よって、所有権を当然に取得するわけではなく、Bの事前許諾の有無、Bの追認により判断されます。

 

民法108条2項
前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。

ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

下記の記述が、民法の規定及び判例並びに下記判決文において正しいか否かを答えよ。

 (判決文)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。

けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。

 

本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできない。

 

(正)

 本問の判決文には、「本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず」とあります。よって、本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできません。

 

AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を令和3年7月1日に授与した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。

 

(誤)

 追認をすると契約時に遡って効力を生じます(民法116条)

本肢は「追認の時から」としているので誤りです。


代理人が代理権の範囲外の行為をしたときは、相手方が善意無過失、かつ、その代理人に代理権があると信じる正当な理由がある場合に限り、表見代理が成立し、代理行為の効果が本人に帰属します(民法110条)

また、表見代理が成立しない場合でも、本人は追認により有権代理と同じようにすることができます。つまり、本肢のケースでは表見代理が成立するしないにかかわらず、契約時に遡って効力を生じることになります。

 

民法116条
前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 

民法110条
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

 Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが、買主を探索中、台風によって破損した建物の一部を、Bに無断で第三者に修繕させた場合、Bには、修繕代金を負担する義務はない。

 

(誤)

本問では建物売却とそれに伴う保存行為が代理権の内容となっています。建物の一部を修繕する行為は保存行為であり、Aが行った行為は代理権の範囲内ですから、その法律効果はBに帰属します(民法99条1項)。

よって、Bは修繕代金を負担しなければなりません。 

 

民法99条1項
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

 

 Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bが未成年者であるとき、Bは、Aの代理人になることができない。

 

(誤)

未成年者等の制限行為能力者であっても代理人になることはできます。民法102条では、制限行為能力者の代理行為は取り消すことができないこととし、制限行為能力者代理人となれることを暗に示しています(民法102条)。


※旧民法102条では「代理人は、行為能力者であることを要しない。」と明文化されていました。この規定は上記の条文として引き継がれています。 

 

民法102条
制限行為能力者代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人としてした行為については、この限りでない。

 

AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を令和3年7月1日に授与した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bが自己又は第三者の利益を図る目的で、Aの代理人として甲土地をDに売却した場合、Dがその目的を知り、又は知ることができたときは、Bの代理行為は無権代理とみなされる。 

 

(正)

 代理人が、自己または第三者の利益を図る目的でした代理行為は、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、無権代理行為とみなされます(民法107条)。

よって、Bの代理行為は無権代理とみなされます。
なお、相手方が悪意であるときに限定されているのは、善意の相手方と代理権を濫用するような人を代理人にした(落ち度のある)本人の比較では、取引の安全性の観点から相手方を保護する必要が勝るためです。

悪意の相手方との比較では、本人の保護が勝ると判断されます。

 

 民法107条

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

 

 AがBの代理人としてB所有の甲土地について売買契約を締結した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが無権代理人であってEとの間で売買契約を締結した後に、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合、Eは甲土地の所有権を当然に取得する。

 

(誤)

無権代理人の死亡により、本人が単独で無権代理人を相続した場合、本人は無権代理行為を拒絶することができます(最判昭37.4.20)。

Aを単独で相続したBは無権代理行為を拒絶できるため、Bが追認をしない限り、Eは甲土地の所有権を取得することはできません。

 

最判昭37.4.20
本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。

 

 

A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。なお、表見代理は成立しないものとする。

Aの死亡により、BがDとともにAを相続した場合、DがBの無権代理行為を追認しない限り、Bの相続分に相当する部分においても、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。

 

(正)

 本人が死亡し、無権代理人が共同相続したときは、共同相続人全員が追認した場合に限り、無権代理人の相続分についても有効となります(最判平5.1.21)。

 

最判平5.1.21
無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。 

 

 設問が、民法の規定及び判例並びに下記判決文において、正しいか否かを答えよ。

(判決文)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。

本人が無権代理人を相続した場合、当該無権代理行為は、その相続により当然には有効とならない。

 

(正)

本人が無権代理人を相続した場合、当該無権代理行為は、その相続により当然には有効とはなりません(最判昭37.4.20)

 

最判昭37.4.20
本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。

 

 Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果はAに帰属する。

 

(誤)

 代理権の相手方が代理人の意図を知り、または知ることができた場合、心裡留保により本件契約は無効となり、効果がAに帰属することもありません(民法93条最判昭42.4.20)

 

 民法93条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

 

最判昭42.4.20
代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法第九三条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。

 

AがA所有の土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bが自らを「売主Aの代理人B」ではなく、「売主B」と表示して、買主Cとの間で売買契約を締結した場合には、Bは売主Aの代理人として契約しているとCが知っていても、売買契約はBC間に成立する。 

 

(誤)

代理行為が成立するためには、代理人が本人のためにすることを示す必要があります。

代理人が本人のためにすることを示さないで意思表示をした場合は、代理人自身のためにしたものとなります。

ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、この限りではありません(民法100条)
したがって、買主Cが、Bが売主Aの代理人と知っていた場合には有効な代理行為となり、売買契約はAC間で成立します。

 

民法100条
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

 

AがA所有の土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Bは、Aに損失が発生しないのであれば、Aの意向にかかわらず、買主Fの代理人にもなって、売買契約を締結することができる。

 

(誤)

 本人の許諾がある場合と債務の履行をする場合を除き、損失の発生に関係なく、原則として双方代理はできません(民法108条1項)。
本肢は「Aの意向にかかわらず」としているため誤りです。

 

 民法108条1項
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

 

Aが、Bに代理権を授与してA所有の土地を売却する場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bは、Aが死亡した後でも、Aの代理人としてこの土地を売却できる。

 

(誤)

 代理権は、①本人の死亡、②代理人の死亡・破産・後見開始によって消滅します(民法101条1項)

Aの死亡時より代理権は消滅するため、Bはその後Aの代理人として土地を売却することはできません。

 

民法101条1項
代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。

 

 設問が、民法の規定及び判例並びに下記判決文において、正しいか否かを答えよ。

(判決文)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。

本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで、法律効果は同じである。

 

(誤)

本人が追認拒絶をした時点で本人に効力が及ばないことが確定するので、その後に無権代理人が本人を相続しても、その無権代理行為は無効となります。

一方、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合、無権代理人が追認拒絶をすることは信義則上許されず、当然に有効となります最判昭40.6.18)。

 

 最判昭40.6.18
無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。

 

 Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AがBに代理権を授与するより前にBが補助開始の審判を受けていた場合、Bは有効に代理権を取得することができない。

 

(誤)

 制限行為能力者であっても代理人になることは可能です(民法102条)。
よって、Bが被補助人であっても、Bは有効に代理権を取得することができます。

 民法102条
制限行為能力者代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人としてした行為については、この限りでない。

 

A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。なお、表見代理は成立しないものとする。

Bの死亡により、AがBの唯一の相続人として相続した場合、AがBの無権代理行為の追認を拒絶しても信義則には反せず、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。 

 

(正)

 本人が無権代理人を相続した場合には、本人が本来有していた追認拒絶権を行使することは可能です。

Aが追認拒絶を行使し得ることから、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではありません(民法113条最判昭37.4.20)。

 

民法113条
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

 

最判昭37.4.20
本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。

 

 B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には、不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も、本件売買契約は有効である。

 

(誤)

 夫婦の日常の家事に関する範囲内で第三者と法律行為をした場合、夫婦双方がその債務の責任を負うこととされています(民法761条)

この規定は「日常家事連帯責任」と呼ばれ、判例では夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき代理権を有するものとしています。

しかし、本代理権の範囲を超えた法律行為があった場合においては、直ちに表見代理の適用を行うのではなく、法律行為の相手方が、その行為が日常の家事の範囲と認識していたという正当な理由があるときに限り、表見代理を類推適用すべきであるとしています(最判昭44.12.18)。
本肢の場合、不動産売買は通常夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内とは言えず、またCもこれを認識していたので、売買契約は無効となります。

 

民法761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

 

最判昭44.12.18
夫婦の一方が民法七六一条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権を基礎として一般的に同法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定すべきではなく、その越権行為の相手方である第三者においてその行為がその夫婦の日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、同条の趣旨を類推して第三者の保護をはかるべきである。 

 

A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述が、民法の規定及び判例において、正しいか否かを答えよ。なお、表見代理は成立しないものとする。

Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。

 

 

(正)

無権代理行為が追認された場合、原則として契約時に遡ってその効力を生じます

よって、AC間の売買契約は有効となります(民法116条)。 

 

 民法116条
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

 

過去問 意思表示

民法第95条本文は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と定めている。これに関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、法律行為の要素となる。

 

(正)

動機の錯誤は、表意者が動機を意思表示の内容とし、かつ明示的又は黙示的に表示した場合に限り、法律行為の要素となります(民法95条2項)。
本肢は、表意者が相手方に明示的に表示しているので法律行為の要素となります。

 

民法95条2項
前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

 

 

民法94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することはできない」と定めている。次の記述が、民法の規定及び判例によれば、同項の「第三者」に該当しない場合は〇、該当する場合は×を答えよ。

Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたC

 

(○)

CはBに金銭を貸し付けていますが、これは単にBに土地があるという信用の元になされた行為であり、法律上の利害関係があるとは言えません。

Cのように仮装名義人に金銭を貸し付けた者は単なる一般債権者であり「第三者」には該当しません。

 

 

A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結し、Bが当該土地につき第三者との間で売買契約を締結していない場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Aの売渡し申込みの意思は真意ではなく、BもAの意思が真意ではないことを知っていた場合、AとBとの意思は合致しているので、売買契約は有効である。

 

 

 (誤)

表意内容と自身の真意が異なることを自覚しながら意思表示を行うことを「心裡留保(しんりりゅうほ)」といいます。心裡留保による意思表示は原則として有効ですが、相手方がその真意を知り、または知り得た場合は無効となります 。

本肢のケースでは、意思表示の相手方であるBがAの心裡留保につき悪意であるため、売買契約は無効となります。

 

 

Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。

この場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない

 

 

 (正)

判例では、不動産の仮装譲受人から抵当権の設定を受けたもの(大判大4.12.17)や仮装債権の譲受人(大判昭6.6.9)も「第三者」に該当するとしています。
つまり、虚偽表示の目的物を差し押さえた債権者も第三者に該当します。


したがって、Aは善意のCに対して売買契約の無効を主張することはできません(仮想譲受人の差し押さえを行っていない、単なる債権者は利害関係があるとは言えず「第三者」にすら該当しません)。

 

 

A所有の甲土地についてのAB間の売買契約に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AB間の売買契約が、AとBとで意を通じた仮装のものであったとしても、Aの売買契約の動機が債権者からの差押えを逃れるというものであることをBが知っていた場合には、AB間の売買契約は有効に成立する。

 

(誤)

相手方と通じてウソの意思表示をすることを通謀虚偽表示といいます。通謀虚偽表示は、相手方の善意・悪意を問わず無効となります

 

 

AがBに甲土地を売却した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがDに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らなかったとしても、Dが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。

  

(誤)

三者の詐欺は、相手方が悪意である場合にのみ取り消すことができます(民法96条2項)。
本肢の場合、Bは第三者の詐欺の事実を知らずにAから甲土地を購入したので、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができません。これは、Bから甲土地の転売を受けた転得者Dの善意・悪意に関係ありません。 

 

 

民法第95条本文は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と定めている。これに関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、原則として自らその取消しを主張することができない。

 

 

(正)

表意者に重大な過失があるときは、表意者は意思表示の取消しをできません。

相手方が悪意または重過失のときは、表意者は意思表示の取り消しを主張できる。

 

民法95条3項
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
1 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
2 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

 

 

AがBに甲土地を売却した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって取り消しをすることができない場合は、BもAの錯誤を理由として取り消しをすることはできない。 

 

 

(正)

錯誤による意思表示の取り消しは、錯誤に陥った者しかすることができません。

また、表意者に重大な過失があったときには、一部の場合を除いて錯誤による取り消しを主張できません(民法95条3項)。

そして判例では、表意者が取り消しをすることができない場合は、第三者も表意者の錯誤を理由として取り消しをすることはできないとしています(最判昭40.9.10※無効→取り消し)。


よって、Aに重大な過失があって取り消しをすることができない場合は、第三者であるBも同様に取り消しできません。

 

 

Aが、Bに住宅用地を売却した場合の錯誤に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bは、代金をローンで支払うと定めて契約したが、Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合、Bは、錯誤による売買契約の取り消しをすることはできない。

 

 

(正)

錯誤が表意者の重過失によって生じた場合は、原則として錯誤による取消しを主張することができません(民法95条3項)。

ローンで支払うという契約上、ローン融資を受けられないという事態は要素の錯誤に当たりますが、そこにはBの重過失があったので錯誤による売買契約の取り消しはできません。

 

 

Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受けた場合は、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Aに対して、その所有権を主張することができる。

 

 

(正)

善意無過失の第三者に対しては通謀虚偽表示による無効を対抗できません(民法94条2項)。

したがって、Aは、Cに対して、AB間の売買契約が無効であることを対抗することができず、AからBへの所有権の移転がなかったことを対抗することができません。

 

有効なA→B→Cの転々譲渡と考えると、BとCは当事者、AとCは前主後主の関係となります。

前主であるAは民法177条にいう第三者に当たりませんので、CはAに対して登記なくして所有権を主張することができます。

 

Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。

 

(正)

Dは、AB間の虚偽表示について善意の転得者となります。転得者も当事者以外のものである以上、「第三者」に含まれます。

よって、Aは、虚偽表示による無効を善意の第三者であるDに主張することはできません

 

 

民法94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することはできない」と定めている。

次の記述が、民法の規定及び判例において、同項の「第三者」に該当しない場合は〇、該当する場合は×を答えよ。

Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者C

 

 

(×)

 Cのように虚偽表示の目的物を善意で差し押さえた譲受人の債権者は「第三者」に該当します。

 

Aが、Bの詐欺によって、A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aは、Bが詐欺をしたことを、Cが知り又は知ることができたときでないと、売買契約の取消しをすることができない。

 

 (正)

三者の詐欺により意思表示を行った場合、意思表示の相手方が詐欺の事実を知り、または知ることができた(悪意/有過失=善意無過失でない)場合に限り、意思表示を取り消すことができます。

 

よって、Aは、Bが詐欺をしたことにつき、Cが悪意(知り)又は知ることができた(有過失)ときでなければ売買契約を取り消すことはできません。

 

民法94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することはできない」と定めている。次の記述が、民法の規定及び判例において同項の「第三者」に該当しない場合は〇、該当する場合は×を答えよ。。

Aが所有する甲土地につき、AとBの間に債権債務関係がないにかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者C

 

 (×)

Cは「第三者」に該当する。

CはAB間の虚偽表示による抵当権設定登記に基づき、Bから抵当権の転抵当を受けています。このケースではCは「第三者」に該当し、AB間の抵当権設定登記が虚偽表示により無効とされた場合でも、Cは転抵当権の設定を対抗できます。

 

AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述が、民法の規定において、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができる場合は〇、できない場合は×を答えよ。

Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合

 

 (×)

AはBに対して錯誤による取り消しを主張できない。

Aは意思に反して「10万円で売る」と意思表示しているので、契約上重要な部分に表示に錯誤が認められます。

表意者Aに重大な過失があり、相手方Bは善意無過失ですから、Aは錯誤による取消しができません。

 

Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。

この場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間売買契約の無効をCに主張することができない。

 

 (正)

民法第94条(虚偽表示)に関して問われています。
同条第1項には「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」と規定されており、同条第2項には「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定されています。
つまり、Cが善意である以上、AはCに対して売買契約の無効を主張することはできません。
また、判例によるとCは善意の第三者であればよく、対抗要件となる登記を備えている必要はありません。

 

民法94条
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

 

 

A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結し、Bが当該土地につき第三者との間で売買契約を締結していない場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Aが、Cの詐欺によってBとの間で売買契約を締結した場合、Cの詐欺をBが知っているか否かにかかわらず、Aは売買契約を取り消すことはできない。

 

 

 (誤)

 第三者による詐欺行為により意思表示を行った場合、意思表示の相手方が悪意/善意有過失の場合に限り、当該意思表示を取り消すことができます。

 

本肢のケースでは、Bが悪意(知っている)または有過失(知らないことにつき過失がある)であればAは売買契約を取り消すことができます。よって、記述は誤りです。

 

Aが、Bに住宅用地を売却した場合の錯誤に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが、今なら課税されないと信じていたが、これをBに話さないで売却した場合、後に課税されたとしても、Aは、この売買契約を錯誤によって取り消すことはできない。

 

 (正)

意思表示の動機に錯誤があった場合には、その動機が相手方に表示されていた場合に限り取消しの対象となります(民法95条2項)。

本件では、AはBに「課税されないので売る」という事情を話していないので動機が表示されていたとは言えません。よって、取り消すことはできません。

 

 

AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。

この場合の次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

錯誤を理由としてこの売却の意思表示が取消しとなる場合、意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは自ら取り消すことはできない。

 

 

 (正)

表意者に重過失があるときは錯誤取り消しを主張することはできません。

 

【表意者に重過失があっても取り消しを主張できる場合】

①相手方が悪意・重過失場合

または

②相手方が同一の錯誤に陥っていた場合

 

 

Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。

この場合に関する次の記述が民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。 

 

(誤) 

Bとの間で乙建物の賃貸借契約を結んでいるCは、甲土地の契約に関しては関係がないため、第三者に該当しない。

虚偽表示の場合の取り消しは、善意の第三者に対抗できないが、この場合のCは第三者ではないため、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができる。

 

最高裁判例は次のように理由を述べています。

最判昭57.6.8
土地の仮装譲受人(B)がその土地(甲土地)上に建物(乙建物)を建築して、これを他人(C)に賃貸した場合。

他人(C)は、仮装譲渡された土地(甲土地)については法律上の利害関係を有するものとは認められないから、民法94条2項所定の「第三者」にはあたらないと解するのが相当である。

つまり、もしCが「善意」であっても「第三者」ではないので、AはAB間の売買契約の無効をCに対して主張できます。

 

 

民法94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することはできない」と定めている。

次の記述が、民法の規定及び判例において、同項の「第三者」に該当しない場合は〇、該当する場合は×を答えよ。

AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたC 

 

 

 (×)

Cは第三者に該当する 

債権の発生原因である契約が虚偽表示である場合、その仮装債権を譲り受けたCは「第三者」に該当します。

 

 

Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。 

 

 

(誤)

Eは、Fに対して、その所有権を主張することができない。

 

善意無過失のEはAに対して所有権を主張することができます。

また、所有者Aから土地の譲渡を受けたFも同様にAに対して所有権を主張することができます。

この場合、EとFは対抗関係になり、先に登記を備えた方が他方に所有権を主張することができます。 

 

 

AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。

この場合、次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示を取り消すことはできない。

 

 

 (誤)

錯誤の内容が重要。

 

【要素の錯誤】

意思表示の重要な部分に関する錯誤があること。

 

要素の錯誤であるときは、原則として意思表示を取り消すことができます。

錯誤による無効は、売主の勘違いについて、重過失(重い不注意)がないこと、かつ、要素(契約の重要な部分)の錯誤である、という2つの条件を満たした時のみ主張できます。

※ 表意者に重大な過失がある場合は無効を主張できない。

 

・動機の錯誤

意思と表示は合致していて間違いがないが、そもそもの動機部分で勘違いしていること

動機の錯誤は本人が勝手に思い込んで起きているので、原則取り消しはできない。

契約時にその動機を明示か黙示していれば、取り消しを主張できる。

 

・表示の錯誤

意思と表示がバラバラで、意思を表示する際に勘違いしてしまった場合

 

 

Aが、Bに住宅用地を売却した場合の錯誤に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが、今なら課税されないと信じており、これをBに話して売却した場合、後に課税されたとしても、Aは、この売買契約を錯誤によって取り消すことはできない。 

 

 (誤)

意思表示の動機に錯誤があった場合には、その動機が相手方に表示されていた場合は取消しの対象となります(民法95条2項)。

本件では、AはBに「課税されないので売る」という事情を話しているので動機が表示されていたと言える。よって、取り消しができる。

 

 

AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。

この場合、次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。
  2. 錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても、この売却の意思表示が無効となることはない。
  3. 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAに重い過失があるときは、Aは自らその無効を主張することができない。
  4. 錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示の無効を主張できる。

 

1 (誤)

設問の場合、要素に錯誤があり、かつAは重大な過失がないので、無効となり得ます。

 

2 (誤)

基本的には、動機の錯誤については無効となることはありません

しかし、表意者(A)が相手方(B)に内容を表示していた場合は、無効となり得ます。

したがって、「無効となることはない」としている本問は誤りとなります。

 

3 (正)

表意者(A)に重大な過失があった場合は、主張を無効とすることができません。

よって、本問は正しい記述となります。

 

4 (誤) 

 錯誤の無効は、表意者を保護するための制度です。

したがって、表意者が無効を主張しない限り、無効が認められることはありません。

 

 

AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述が、民法の規定において、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができる場合は〇、できない場合は×を答えよ。

Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

 

 

 (×)

 Aは誤った思い込みをしていますが、意思と意思表示は合致しているので錯誤はありません。この場合、取引の安全に配慮して相手方Bを保護するため、Aは錯誤による取消しをすることができません。

 

 

 A所有の甲土地についてのAB間の売買契約に関する次の記述が、民法の規定及び判例において、正しいか否かを答えよ。

Aは甲土地を「1,000万円で売却する」という意思表示を行ったが、当該意思表示はAの真意ではなく、Bもその旨を知っていた。

この場合、Bが「1,000万円で購入する」という意思表示をすれば、AB間の売買契約は有効に成立する。

 

 (誤)

AB間の売買契約は有効に成立しない。

自分の真意とは異なることを自覚しつつ偽の意思表示をすることを心裡留保といいます。心裡留保の場合、相手方が善意であれば当該契約は有効、真意でないことを知り(悪意)、または知ることができた(有過失)ときは無効となります。

 

 

AがBに甲土地を売却した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。

 

 

(正) 

Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。
 
虚偽表示による意思表示の無効は善意の第三者に対抗することができません(民法94条)。よって、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができません。

 

 

民法第95条本文は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と定めている。これに関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、法律行為の要素とならない。

 

 

 (誤)

動機の表示が、しぐさなどの黙示的な性質であったとしても、事実関係によっては法律行為の要素となることがあります。

 

最判平1.9.14
協議離婚に伴い、夫が自己の不動産全部を妻に譲渡する旨の財産分与契約をした。

後日、夫に二億円余の譲渡所得税が課されることが判明した。

この契約の当時、妻のみに課税されるものと誤解した夫が心配して、これを気遣う発言をしており、妻も自己に課税されるものと理解していた。

このように、判示の事実関係の下においては、他に特段の事情がない限り、夫の右課税負担の錯誤に係る動機は、妻に黙示的に表示されて意思表示の内容をなしたものというべきである。

 

 

Aが、Bの詐欺によって、A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aは、詐欺に気が付いていたが、契約に基づき、異議を留めることなく所有権移転登記手続をし、代金を請求していた場合、詐欺による取消しをすることはできない。

 

 

(正) 

取り消すことができる行為について、自身の債務を履行したり相手方に履行を請求したりすると、その行為を追認したとみなされます(民法125条1号・2号)。

よって、契約の履行(所有権移転登記手続き)と履行の請求(Cに対する代金請求)を行ったAは、それ以降、詐欺による取消しをすることはできません。

 

 

AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。

この場合、次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても、この売却の意思表示を取り消すことはできない。 

 

 

(誤) 

動機の錯誤であっても、当該動機が表示され意思表示の内容となっている場合は取り消すことができます。

 

意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。 

 

AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述が、民法の規定において、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができる場合は〇、できない場合は×を答えよ。

Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

 

(○) 

相手方が共通に錯誤に陥っていた場合(2人ともが勘違いをしていた場合)は取り消しができる。

2人ともが勘違いをしていなければ、そもそも成立していなかった契約だから。

 

 「10万円で売る」という意思表示をするに至った動機に思い違いがあり、それが相手方に表示されているので動機の錯誤があります。

Aの過失の有無は明らかではありませんが、Bも同一の錯誤(共通錯誤)に陥っていたので、Aは錯誤による取消しができます。 

 

民法95条

1.意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

 

2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

 

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

 

4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

 

Aが、Bの詐欺によって、A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において、正しいか否かを答えよ。

Cが当該建物を、詐欺について善意無過失のDに転売して所有権移転登記を済ませても、Aは詐欺による取消しをして、Dから建物の返還を求めることができる。 

 

 

(誤) 

詐欺による取消しは善意無過失の第三者には対抗できません(民法96条3項)。

Cより建物の譲渡を受けたDは善意無過失の第三者であるため、Aは詐欺による取消しを対抗することができず、建物の返還請求はできません。 

 

 

Aが、Bに住宅用地を売却した場合の錯誤に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、売買契約を錯誤によって取り消すことができる。

 

(正) 

 住宅用地の取得という契約の目的に照らすと、住宅建築に大きな支障となる地下空洞があった事実は要素の錯誤に当たります。

Bは媒介をした宅地建物取引業者の説明(重説等)をよく聞き、自分でも調べたので重過失はありません。

よって、Bは錯誤を主張して売買契約を取り消すことができます。

 

 

A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。

 

(誤) 

動機の錯誤で取り消しをするには、その事情が明示または黙示に表示されていることが要件となっています(民法95条2項)。

本肢の場合、思い込んでいただけであり相手方に動機が明示または黙示に表示されたとは言えないため、取り消しを行うことはできません。

 

Aが、Bの詐欺によって、A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AがCに所有権移転登記を済ませ、CがAに代金を完済した後、詐欺による有効な取消しがなされたときには、登記の抹消と代金の返還は同時履行の関係になる。 

 

(正) 

 詐欺により売買契約が取り消された場合、契約解除に伴う双方の原状回復義務は同時履行の関係になります。

 

【同時履行の関係にある】

・契約解除による原状回復義務

・弁済と受領証書の交付

・無効、取り消し後の原状回復義務

・請負の目的物の引き渡しと代金支払い

・建物買取権行使時の土地、建物引き渡しと代金支払い 

 

【同時履行の関係にない】

・債務弁済と抵当権抹消手続き

・債務弁済と債務証書の返還

・敷金返還と建物明け渡し

・造作買取権行使時の造作代金支払いと建物引き渡し

 

 

 

AがBに甲土地を売却した場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。

 

(正) 

 第三者の詐欺により、売買契約が取り消された場合、登記抹消義務と代金返還義務は同時履行の関係となります

 

【同時履行の関係にある】

・契約解除による原状回復義務

・弁済と受領証書の交付

・無効、取り消し後の原状回復義務

・請負の目的物の引き渡しと代金支払い

・建物買取権行使時の土地、建物引き渡しと代金支払い 

 

【同時履行の関係にない】

・債務弁済と抵当権抹消手続き

・債務弁済と債務証書の返還

・敷金返還と建物明け渡し

・造作買取権行使時の造作代金支払いと建物引き渡し

 

 

Aが、Bに住宅用地を売却した場合の錯誤に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

売買契約に要素の錯誤があった場合は、Bに代金を貸し付けたCは、Bがその錯誤を認めず、取り消す意思がないときでも、Aに対し、Bに代位して、取り消すことができる

 

(誤) 

表意者が錯誤によって取り消す意思がないときは、その相手方や第三者が錯誤による取消しを主張することができません(最判昭40.9.10※無効→取消し)

錯誤による取消しは表意者を保護するものであると解されているからです。

 

三者Cが表意者Bに対する債権を保全する必要がある場合には、Bが錯誤を認めさえしていれば債権者代位権を行使して取り消しを主張できる旨の判例がありますが、本肢のように表意者が認めていないときはこの限りではありません。

 

最判昭40.9.10
表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない。

 

 

A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結し、Bが当該土地につき第三者との間で売買契約を締結していない場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Aが、Cの強迫によってBとの間で売買契約を締結した場合、Cの強迫をBが知らなければ、Aは売買契約を取り消すことができない。

 

 

(誤) 

Cの強迫をBが知らなくても、Aは売買契約を取り消すことができる。 

強迫による意思表示は、どんな場合でも取り消すことができます(民法96条2項)
本肢のケースは第三者による強迫で意思表示したものですが、もちろんこの場合で取り消すことができます。

また、転得者に対しても取り消しを主張することが可能です。

 

AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。

この場合、次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

錯誤を理由としてこの売却の意思表示が取消しとなる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示を取り消すことができる。

 

(誤) 

Bはこの売却の意思表示を取り消すことができない。

 

錯誤による取消しは表意者を保護する主旨があるので、取消しの意思表示ができるのは表意者に限定されます。

相手方がこれを行使することはできません(通説)。

また、判例では表意者自身に取消しを主張する意思がないときは、第三者も取り消しを主張できないとしています

 

 

A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

BがEに甲土地を転売した後に、AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合には、EがBによる強迫につき知らなかったときであっても、AはEから甲土地を取り戻すことができる。

 

 

(正) 

強迫による意思表示の取消しは、善意の第三者や善意の転得者にも対抗することができます(民法96条3項の反対解釈)。
よって、Eが強迫の事実を知らなかったとしても、AはEから土地を取り戻すことができます。

 

A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。

 

(誤) 

詐欺による意思表示の取り消しをした者と、取り消し後に譲渡を受けた第三者は対抗関係に立ちます(大判昭17.9.30)。この場合、登記を先に具備したDが優先するため、売主Aは甲土地を取り戻すことはできません

 

民法177条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

A所有の甲土地についてのAB間の売買契約に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

AB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は無効となる。

 

(誤) 

 意思能力がない状態で行った法律行為は無効となります(民法3条の2)。民法改正により明文化された事項の1つです。

 

民法3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

 

 

A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Bは、第三者であるCから甲土地がリゾート開発される地域内になるとだまされて売買契約を締結した場合、AがCによる詐欺の事実を知っていたとしても、Bは本件売買契約を詐欺を理由に取り消すことはできない。

 

(誤) 

 第三者詐欺の場合、相手方がその詐欺の事実につき知り、または知ることができた場合(悪意/有過失)に限り、意思表示を取り消すことができます

よって、AがCによる詐欺の事実を知っていれば、Bは本件売買契約を取り消すことが可能です。

 

民法96条2項
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

 

民法第95条本文は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と定めている。これに関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、民法第95条に基づく意思表示の取消しを主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示の取消しを主張することはできない。

 

(正) 

錯誤による取消しは表意者を保護するための規定ですから、表意者自身が意思表示の瑕疵を認めていない場合、第三者が取消しを主張することはできないとされています(最判昭40.9.10※無効→取消し)。

 

 

A所有の甲土地についてのAB間の売買契約に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

Aが第三者Cの強迫によりBとの間で売買契約を締結した場合、Bがその強迫の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはAB間の売買契約に関する意思表示を取り消すことができる。

 

 

(正) 

 第三者からの強迫による意思表示は、取り消すことが可能です(民法96条1項)。この取り消しは相手方の善意・悪意を問わず、また第三者からの強迫があった場合でも同様です 

 

AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述が、民法の規定において、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができる場合は〇、できない場合は×を答えよ。

Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

 

(×) 

Aの「100万円で売りたい」という意思と、「8,000ドル×100円=800,000円で売る」という表示が食い違っており、20万円の違いは契約上重大なので表示の錯誤があります。しかし、Aの錯誤は重大な過失によるものであり、相手方Bは善意無過失ですから、Aは錯誤による取消しができません。 

 

 

Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述が民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

BがAから所有権移転登記を受けていた場合でも、Aは、Bに対して、AB間の契約の無効を主張することができる。

 

(正) 

 通謀虚偽表示はそもそも無効です(民法94条1項)。

AからBへの所有権移転は効力を生じておらず、実体的有効要件を満たさないので登記は無効となります。
よって、Aは所有権移転登記を受けているBに対して契約の無効を主張することができます。

 

民法94条1項
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

 

 

A所有の土地につき、AとBとの間で売買契約を締結し、Bが当該土地につき第三者との間で売買契約を締結していない場合に関する次の記述が、民法の規定において正しいか否かを答えよ。

Aが、強制執行を逃れるために、実際には売り渡す意思はないのにBと通謀して売買契約の締結をしたかのように装った場合、売買契約は無効である。

 

 

(正) 

実際に売買の意思がないのに、相手方と共謀して虚偽の売買契約をした場合、当該契約は「通謀虚偽表示」に該当し、無効となります 

 本肢のケースは、AとBが共謀し、実際に売買契約をしたように見せかけているため無効となります。

 

Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。

 

(正) 

 通謀虚偽表示は無効ですから、AからBへの所有権移転の効力は生じていません(民法94条1項)。Dは所有者であるAから土地の譲渡を受けた者、Bは無権利者ですので、Dは登記なくしてBに所有権を主張することができます。

 

 

過去問 制限行為能力者

 

1 意思能力者または制限行為能力者に関する記述のうち、民法に規定及び判例によれば、正しいものはどれか

 

①意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行なった場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取り消しの時点から将来に向かって無効となる。

 

②未成年者が土地を売却する意思表示を行なった場合、その未成年者が婚姻をしていても、親権者が当該意思表示を取り消せば、意思表示の自転に遡って無効となる。

 

成年被後見人成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行なった場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。

 

被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行なった場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。

 

1 解説

 ①意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行なった場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取り消しの時点から将来に向かって無効となる。

(誤)

※意思能力、、、契約などの法律行為を行うために必要な判断能力のこと。

この能力を欠いている者がした法律行為はそもそも無効であり、取り消しはできない。

 

 

②未成年者が土地を売却する意思表示を行なった場合、その未成年者が婚姻をしていても、親権者が当該意思表示を取り消せば、意思表示の自転に遡って無効となる。

 (誤)

未成年者、20歳未満でも、婚姻すれば成年者として扱われる。

婚姻をしている以上取り消しはできないため、無効にもできない。

 

 

成年被後見人成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行なった場合、成年後見は、当該意思表示を取り消すことができる。

(正)

成年被後見人の法律行為は、原則、成年後見人が代理して行わなければならない。

成年被後見人が行なった行為は取り消すことができる。

成年後見人の同意があったとしても取り消すことができる。

この取り消しは、成年被後見人本人も、成年後見人もすることができる。

 

 

被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行なった場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。

 (誤)

被保佐人が保佐人の事前の同意を得ている場合は、取り消すことができない。

被保佐人は障害が軽度であり、本人の意思決定は尊重される。

被保佐人が保佐人の同意を得ないで、不動産の売却などの重要な財産状の行為をした場合は、取り消すことができる。

この取り消しは保佐人もできる 。

 

正解 3

 

 

2 行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか

 

成年被後見人が行なった法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。

 

② 未成年者は婚姻をしているときであっても、その法定代理人の同意を得ずに行なった法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為については、この限りではない。

 

③精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められる時は、本人の同意がないときであっても、同審判をすることができる。

 

被保佐人が、保佐人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる

 

2 解説

 

成年被後見人が行なった法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。

(正)

原則、取り消すことができる。

その法律行為が本人に事理弁識能力がある状態で行われたとしても、その時に本当に事理弁識能力があったかどうかがわからないため、本人を保護する観点から、原則として取り消しが認められている。

日用品の購入その他日常せ生活に関する行為については、本人の意思を尊重するために、取り消しはできない。

 

 

② 未成年者は婚姻をしているときであっても、その法定代理人の同意を得ずに行なった法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為については、この限りではない。

(誤)

婚姻をした未成年者は、未成年であることを理由に、単独で行なった法律行為を取り消すことができない。

 

 

③精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められる時は、本人の同意がないときであっても、同審判をすることができる。

(誤)

本人以外の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要。

被補助人の判断能力の減退が軽度な場合、本人の自己決定を尊重するために、本人のぢういが必要とされている。

※補助開始の審判を請求できるのは、、、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官等

 

 

被保佐人が、保佐人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。

(誤)

行為能力者であると信じさせるために詐術を用いた時は、その法律行為を取り消すことはできない。

不動産の売買契約については、被保佐人が保佐人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得ていない場合は、取り消すことができる。

 

正解 1

 

 

3 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか

 

①土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するにあたっては、その法廷代理人の同意は必要ない。

 

成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要である。

 

被保佐人については、不動産を売却する場合だけでなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。

 

④被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。

 

 

3 解説 

 

①土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するにあたっては、その法廷代理人の同意は必要ない。

(誤) 

法定代理人の同意が不要な場合】

・未成年者が単に権利を得る

・義務を免れる法律行為をする

※①の場合は、土地の管理義務は免れるが、土地所有権を失うことになるので、単に義務を免れる行為には該当せず、法定代理人の同意が必要。

 

成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要である。

(正)

居住している建物は、成年被後見人にとって重要。

成年後見人が成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物、またはその敷地について、売却、賃貸、賃借権の解除または抵当権の設定、その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可が必要。

 

被保佐人については、不動産を売却する場合だけでなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。

(誤)

【保佐人の同意が必要な場合】

・重要な財産上の行為をする場合

※日用品の購入は重要な財産上の行為には該当しないので、保佐人の同意は不要。

 

④被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。

(誤)

常に補助人の同意が必要とはいえない。

特定の法律行為に関して、補助人に同意を得なければならない旨の審判がなされた時には、補助人の同意が必要。 

 

正解 2

 

 

 4 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか

 

①古着の仕入れに関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために、建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。

 

被保佐人が不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。

 

成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するさい、後見監督人がいる場合は、後見監督人の許可があれば足り、家庭裁判所の許可は不要である。

 

④被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手がたに補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。

 

4 解説

①古着の仕入れに関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために、建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。

(誤)

営業許可の範囲外の法律行為は、当該契約を取り消すことができる。

営業を許可された未成年は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有するが、その営業に関係のない行為については、成年者と同一の行為能力を有しない。

 

被保佐人が不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。

 (誤)

【保佐人の同意が必要】

・不動産などの重要な財産を得る・手放すことを目的とする行為

・贈与の申し込みを拒絶するなどの重要な財産上の行為

 

 

成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するさい、後見監督人がいる場合は、後見監督人の許可があれば足り、家庭裁判所の許可は不要である。

(誤)

後見監督人がいる場合でも、家庭裁判所の許可が必要。

居住している建物は、成年被後見人にとって重要。

成年後見人が成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物、またはその敷地について、売却、賃貸、賃借権の解除または抵当権の設定、その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可が必要。

 

④被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手がたに補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。

(正)

詐術を用いている場合は、その法律行為を取り消すことはできない。 

保護者の同意を得たと偽ることも詐術にあたる。

 

正解 4 

 

5 

A所有の不動産につき、Aを売主、Bを買主とする売買契約が締結されたが、

Aは未成年者であり、未成年後見人であるCの同意を事前に得ていなかった。

この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

(1985年の宅建過去問 問-9)

 


①Aが「自分は成年者である。」と偽ってBとの契約を締結した場合には、Aはこれを取り消すことはできない。


②Aの行為は無効であるが、その後Bから当該不動産を買い受けたDがAの制限行為能力を知らなかった場合は、A及びCは、Dに対し、Aの行為が無効であることを対抗できない。


③Bは、Cに対し、1ヶ月以上の期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告することができ、当該期間内にCが確答を発しなかった場合には、CはAの行為を取り消したものとみなされる。


④AB間の契約締結後、A又はCによる取り消しの意思表示がないまま、Aが成年に達した場合は、この契約は、初めから有効であったものとみなされる。

 

5 解説

 

①Aが「自分は成年者である。」と偽ってBとの契約を締結した場合には、Aはこれを取り消すことはできない。

(正)
制限行為能力者が、自分は能力者であると相手方をだまして契約した場合は、制限行為能力者はその契約を取り消すことができなくなる。

未成年者であっても、詐称するものを保護する必要はないと判断されるため。

 

 

②Aの行為は無効であるが、その後Bから当該不動産を買い受けたDがAの制限行為能力を知らなかった場合は、A及びCは、Dに対し、Aの行為が無効であることを対抗できない。

(誤)
未成年者が未成年後見人の同意を得ずに契約をした場合、その契約は無効ではなく、取り消し得るものとなり、この取消しは第三者にも対抗できる。

未成年者を保護するため。

 

③Bは、Cに対し、1ヶ月以上の期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告することができ、当該期間内にCが確答を発しなかった場合には、CはAの行為を取り消したものとみなされる。

(誤)
未成年者と取引をした相手方は、未成年後見人に対して1ヶ月以上の期間内に追認するか否かを確答するよう催告することができる。

その期間内に確答がなかった場合、未成年後見人は未成年者の行為を追認したものとみなされる。

黙認している、認めていると判断されるため。

 

④AB間の契約締結後、A又はCによる取り消しの意思表示がないまま、Aが成年に達した場合は、この契約は、初めから有効であったものとみなされる。
(誤)

A又はCによる取り消しの意思表示がないまま、Aが成年に達したとしても、取消権はまだ有効なので、Aが契約の取り消しをする場合もある。

Aが成人になっただけでは、この契約は最初から有効だったということにはならない。

 

【取消権が有効な期間】
・追認することができる状態になったときから5年

(未成年者が成人した時)(制限行為能力者が行為能力者になったとき)

または

・契約締結時から20年

 

【取消権が消滅するとき】

追認することができる状態になったときから5年を経過すると消滅する

または契約締結時から20年を経過すると消滅する

*どちらか早い方

ex

16歳で契約→成人してから5年経過→25歳

16歳で契約→契約から20年経過→36歳

25歳までは取り消しが可能

 

正解 1

 

6 正誤問題

Aは16歳となり父母の同意を得て結婚したが、18歳で離婚をしてしまい、現在Aに配偶者はいない。 この場合Aは一度結婚していることから、現在も成年者として扱われる。 

 

6 回答

(正)
「一度結婚すると20歳未満の未成年者も成年者として扱う」
その後離婚した場合も、一度結婚し成年者として扱われたという事実により、そのまま成年者として扱われる。

  

7 正誤問題

未成年者が甲土地を売却する意思表示を行った。 その未成年者が翌月に婚姻した場合、 本人は、未成年者であったことを理由に一定期間はその意思表示を取消すことができる。

 

7 回答

(正)

未成年者の意思表示は取り消すことができる。

意思表示を行った当時は未成年者なので、甲土地を売却する意思表示は取消すことができる。

 

ただし、未成年者が成年者になると、時効期間が開始する。

成年者になったときから5年間、または契約から20年間を経過したとき、時効によって取消しができなくなる。

 

8 正誤問題

Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況になった場合、

将来、Aの相続人となるB及びCはAの法定代理人となり、 A所有の土地を第三者に売却することができる。

 

 8 回答

(誤)

B、Cが成年後見人となるためには「後見開始の審判」が必要

Aが精神障害になったからといって、 当然に相続人が法定代理人になるわけではない 

 

9 正誤問題

被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、

保佐人は、当該意思表示を取消すことができる。

 

9 回答

(誤)

被保佐人が保佐人の同意を得て土地を売却した場合、取消すことはできない。

 

なぜなら、保佐人は同意権があるから。

被保佐人は保佐人に同意を求めることができる、意思表示ができるから)

 

保護者で同意権がないのは成年後見人のみ、
それ以外の保護者は全員、同意権をもっている

(被成年後見人は重い認知症などの場合のため、成年後見人の同意を求めるようなことはできない。そのため成年成年後見人には、同意権がない)


被保佐人の居住用財産を売却する場合は、保佐人の同意だけでは不十分で、家庭裁判所の許可が必要。

 

10 正誤問題

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者について、

4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、

家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意なくして同審判をすることができる。

 

10 回答 

(誤)

補助開始の審判をするには、本人の同意が必要。

被補助人は制限行為能力者の中でも障害の程度が軽く、本人の判断能力は尊重される。


保佐開始の審判と後見開始の審判をするには本人の同意は不要。

 

*上から順に判断能力が高い、本人の意思が尊重される程度が異なる

未成年者

成年被後見人

被保佐人

被補助人

 

11 正誤問題

被保佐人が、保佐人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いた時であっても、取消すことができる

 

11 回答 

(誤) 

原則、制限行為能力者の行った法律行為は取消すことができるが、相手方に信じさせるため詐術を用いた場合は、取消すことができない。

 

12 正誤問題

自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述について、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。

 

 12 回答

(正) 

法律によって作られた法人は権利能力を有するが、法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意団体には権利能力がなく、法律行為をすることができない。

もし任意団体で売買契約を結びたいのであれば、代表者等の個人名義でする必要がある。

よって、売買契約の効果は一切生じないこととなる。

 

13 正誤問題
成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。

 

13 回答

(正)

成年被後見人が行った法律行為のうち、日用品の購入その他日常生活に関する行為については取り消すことができない。

 

14 正誤問題

成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。

 

14 回答

(正)

成年後見人は家庭裁判所が選任する者(民法843条1項)だが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。

成年後見人は最後の親権者が遺言で指定することができ、家庭裁判所による選任はその指定がない場合や必要に応じて行うことになっている。

 

15 正誤問題 
成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する場合には、家庭裁判所の許可を要しない。

 

15 回答

 (誤)

成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要。

居住している建物は成年被後見人本人の生活基盤であり、本人の状態を考慮しなければならない。その判断は安易に行なってはならないので、家庭裁判所を含み判断しなければならない。

 

16 正誤問題

未成年者は、婚姻をしているときであっても、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は取り消すことができる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。

 

16 回答

(誤) 

未成年者は婚姻により成人とみなされる。

よって、法定代理人の同意を得ずに行ったことを理由として、法律行為を取り消すことはできない。

 

17 正誤問題

自己所有の土地を売却するAの、売買契約の相手方に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。

 

17 回答

(誤)

被保佐人が保佐人を同意を得ずに行った、不動産等の重要財産の権利の得失については、保佐人は後から取り消すことができる。(民法13条1項3号)

取消しをすることにより当初から無効だったと見なされるのであり、契約した段階で無効となるわけではない。

 

18 正誤問題
成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する際、後見監督人がいる場合には、後見監督人の許可があれば足り、家庭裁判所の許可は不要である。

 

18 回答

(誤)

成年後見人は、成年被後見人に代わりその居住の用に供する建物等を売却をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。(民法859条の3)

また、これは後見監督人の許可では足りない。

 

19 正誤問題

自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる

 

19 回答

(誤)

婚姻は原則として父母両方の同意が必要だが、一方からの同意を得られないときは父母の一方のみの同意で足りる(民法737条)

よって、買主Eの婚姻は成立している。

未成年であっても婚姻した者は成年とみなされるので、買主Eは未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことはできない(民法753条)

 

20 正誤問題

自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述が、民法の規定及び判例において正しいか否かを答えよ。

買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。

 

20 回答

(正)

そもそも無効。

意思無能力者が行った意思表示は当然に無効(民法3条の2)。

取消しがなくても無効なので本肢は誤り。 

 

21 正誤問題
成年後見人は、自ら後見する未成年者について、後見開始の審判を請求することはできない。

 

21 回答

(誤)

成年後見人は、自ら後見する未成年者について、後見開始の審判を請求することができる。

 

22 正誤問題
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、四親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意がないときであっても同審判をすることができる。

  

22 回答

(誤)

補助開始の審判の請求につき、本人以外からの請求である場合は本人の同意が必要 。

被補助人は制限行為能力者の中でも障害の程度が軽く、本人の判断能力は尊重される。


保佐開始の審判と後見開始の審判をするには本人の同意は不要。

 

*上から順に判断能力が高い、本人の意思が尊重される程度が異なる

未成年者

成年被後見人

被保佐人

被補助人

 

23 正誤問題

被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。

 

23 回答

(正)

詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。

 

24 正誤問題

意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。

 

24 回答

(誤)

意思能力を欠いている者がした意思表示はそもそも行為として無効(民法3条2項)

よって、意思表示を取り消すことで無効になるわけではない。

幼児や、泥酔者、重度の認知症の人などが意志無能力者に該当する。

 

25 正誤問題

成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。

 

25 回答

(誤)

成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができる。

成年被後見人が単独で法律上の行為をすることは原則としてできない。

そのため、単独で結んだ契約は取り消すことができる。

保護者が同意を与えた場合でも、取り消すことができる。

ただし、成年被後見人の日用品購入等の行為は、成年後見人であっても取り消すことができまない。

 

*未成年者の場合と区別しておく

未成年者が単独で行なっても取り消すことができない場合

・単に権利を得、または義務を逃れる行為

法定代理人が処分を許した財産の処分

・許可された営業に関する行為

未成年者は判断能力が全くないわけではないので、未成年者が損をしないと言えるような場合は、その契約は有効となるので、取り消しはできない。

 

26 正誤問題

古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。 

 

26 回答

(誤)

本肢の未成年者は古着の仕入販売に関する営業については成年と見なされる(民法6条1項)

自己が居住するために建物を第三者から購入することは、古着の仕入れ販売に関する営業に含まれないため、法定代理人は当該売買契約を取り消すことができる。

 

27 正誤問題

被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。

 

27 回答

(誤)

土地等の重要な財産の売買には保佐人の同意が必要であるため、これを得ずに売買をした場合は取り消すことができる(民法13条1項3号民法13条4項)

ただし、被保佐人が詐術を用いたときは取り消すことができない。

 

民法21条
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

 

28 正誤問題

被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。 

  

28 回答

 (誤) 

被保佐人民法13条の列挙事項の行為を行う場合に限り保佐人の同意が必要

 

民法13条1項)

1 元本を領収し、又は利用すること。
2 借財又は保証をすること。
3 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4 訴訟行為をすること。
5 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
6 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
10 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

 

民法9条)

日用品の購入その他日常生活に関する行為については同意不要

 

29 正誤問題

成年被後見人成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。

 

29 回答

(正)

成年被後見人が行った行為のうち、成年後見人の「代理」によらず行った行為は、後から成年後見人が取り消すことができる(民法9条)

成年後見人が代理して行なった法律上の行為は有効。

 

成年被後見人の場合、成年後見人の同意を得ても、その同意した内容の通りに意思表示をする可能性が低いと考えられるので、同意を得た意思表示であっても、成年後見人はその意思表示を取り消すことができる。

 

30 正誤問題

被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。 

 

30 回答

(誤)

贈与の申込みを拒絶する際にも、保佐人の同意が必要

 

【保佐人の同意を要する重要な財産上の行為】

1 元本を受け取ること(1号)(※利子は単独で受け取り可)

2 借金をしたり、借金の保証人になること(2号)

3 不動産の売買(3号)

4 訴訟をすること(4号)

5 贈与すること(5号)

6 相続や遺産分割(6号)

7 贈与・遺贈の放棄、負担付贈与・負担付遺贈の承諾(7号)

8 家の新築や増築(8号)

9 5年を超える土地、3年を超える建物の賃貸借(9号)

10   制限行為能力者法定代理人として1~9号の行為をすること(10号)

 

31 正誤問題

成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するためには家庭裁判所の許可が必要である。

 

31 回答

(正)

 成年後見人が、成年被後見人が居住している建物を売却するためには家庭裁判所の許可が必要

 

32 正誤問題

未成年者が土地を売却する意思表示を行った場合、その未成年者が婚姻をしていても、親権者が当該意思表示を取り消せば、意思表示の時点に遡って無効となる。

 

32 回答

(誤)

 婚姻をした者は20歳未満であっても成年者として扱われる(民法753条)

未成年者が法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、後から本人又は法定代理人が取り消すことができるが、婚姻している者の場合は、成年者が行った法律行為とみなされるので、後から意思表示を取り消すことはできない。

本肢の場合、取消しできないので有効な意思表示となる。

  

33 正誤問題

土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。

 

33 回答

 (誤)

婚姻していない未成年者は行為能力を有していない(民法5条1項)

よって、法律行為である土地の売却には法定代理人の同意が必要。

 

また、土地を売却することで土地に管理義務は免れるが、重要な財産を手放すのと同時のため、「単に義務を免れる行為」には当たらない。


なお、未成年者であっても婚姻していた場合には成年が行った法律行為とみなされるので法定代理人の同意は不要。

 

34 正誤問題 

 被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。

 

34 回答

 (誤)

被補助人は、民法13条の列挙事項の行為のうち、家庭裁判所が審判で指定した行為に限り補助人の同意が必要(民法17条1項)
よって、被補助人の行う法律行為すべてに補助人の同意が求められるわけではない。

 

35 正誤問題 

被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。

 

35 回答

(誤)

被保佐人が、重要な財産である不動産を取得・処分する場合には、保佐人の同意が必要(民法13条1項3号)

被保佐人が、同意や許可を受けずに土地を売却した場合には保佐人は後から取り消すことができるが、本肢は保佐人の同意の上で行った意思表示のため取り消せない。

 

 

民法等4ー4 条件と期限と時効

 

 条件とは

 条件(じょうけん)とは、法律行為の効力の発生または消滅を将来発生するかどうか不確実な事実にかからせる附款ふかんをいう。また、そのような事実も条件と呼ばれる。

条件となる事実(条件事実)は、将来の成否が不明な事実に限られる。将来発生することが確実な事実は、期限として扱われる。(ただし、ある事実が条件であるか期限であるかの判別が容易でない場合もある。)

一般に、法律行為はその成立と同時に無制限にその効力を生じるが、当事者が法律行為をする際に、法律行為の効力に制限を付加する場合がある。このような法律行為の一部として付加された制限を法律行為の附款と呼ぶ。負担付贈与(553条)や負担付遺贈(1002条)における負担も附款の一種である。

条件には、停止条件解除条件の二つの種類がある(127条参照)。

 

条件に親しまない行為

法律行為の効力が確定的に発生することが要求されるような行為には、条件をつけることが許されない(条件に親しまない行為)。

(1) 身分行為

婚姻や養子縁組、認知、相続の承認・放棄のような身分行為に条件をつけることは、強行規定または公序良俗に反するために認められない。たとえば、相手の離婚を条件とする婚姻予約は無効である(大判大9.5.28)。

(2) 単独行為

相殺、解除、取消し、追認などの単独行為に条件をつけることは、相手方の地位を著しく不安定にするので、原則として認められない(相殺につき、506条1項)。例外として、条件の内容が相手方を不安定な地位に置くようなものでないときは、条件をつけることが許される。たとえば、一定期間内に債務を履行しないことを停止条件とする解除は、有効であると解されている。なお、遺贈に条件を付けることも可能である(994条2項参照)。

 

 停止条件

 法律行為の効力の発生が将来発生するかどうか不確実な事実にかかっている場合を停止条件という。たとえば、「合格すれば報奨金を与える」という約束の「合格すれば」という部分、または、「合格」という事実が停止条件にあたる。

 

停止条件の成否確定後の効力

条件の成否が確定すると、条件付法律行為の効力が確定する。停止条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を生じ(127条1項)、条件が不成就に確定することにより、確定的に無効となる。

 

条件成就の効果は成就の時から生じ、原則として遡及しない。ただし、当事者の意思表示によって条件成就の効果をその成就前にさかのぼらせることが可能である(127条3項)。

 

 

 解除条件

 法律行為の効力の消滅が将来発生するかどうか不確実な事実にかかっている場合を解除条件という。たとえば、「退学したら奨学金の支給を止める」という約束の「退学したら」という部分、または、「退学」という事実が解除条件にあたる。

 

解除条件の成否確定後の効力

条件の成否が確定すると、条件付法律行為の効力が確定する。解除条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力が消滅し(同条2項)、条件が不成就に確定することにより、確定的に有効となる。

 

条件成就の効果は成就の時から生じ、原則として遡及しない。ただし、当事者の意思表示によって条件成就の効果をその成就前にさかのぼらせることが可能である(127条3項)。

 

条件付権利とは

条件の成否が確定しない間、条件付法律行為の当事者の一方は、条件の成就によって一定の利益を受けるという期待を有する。

たとえば、停止条件付贈与契約における受贈者は、条件の成就により贈与を受けることができるという期待を有する。

民法はこのような期待を一種の権利として保護しており、これを条件付権利と呼ぶ。期待権の一種である。

 

〔解説〕期待権とは

将来一定の事実が発生すれば、一定の利益を受けることができる地位のことを期待権と呼ぶ。条件付権利のほかに、期限付権利や相続権(相続人としての地位)も期待権であるとされる。

 

条件付権利の侵害

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、相手方の利益を害することができない(128条)。

たとえば、停止条件付売買契約の売主が目的物を滅失・毀損したり、第三者に譲渡したりして将来の履行が不可能となった場合は、売主は債務不履行または不法行為にもとづく損害賠償責任を負う。

 

〔参考〕条件付権利の仮登記

停止条件付売買契約の売主が、目的物を第三者に譲渡した場合、第三者への譲渡は無効ではなく、買主(条件付権利者)と第三者とは対抗関係に立つ(先に対抗要件を具備した者が目的物の権利を取得する)。

この場合において、買主が第三者より先に仮登記によって自己の権利を保全しておけば、条件成就後に本登記をすることによって、仮登記以後になされた売主の処分行為の効力を否定することができる。

三者が条件付権利を侵害した場合は、不法行為が成立しうる。

 

条件付権利の処分・相続・保存・担保提供

条件付権利は、一般の規定に従って、処分、相続、保存ができ、また、これに担保をつけることができる(129条)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時効とは

時効には、時間の経過によってそれまで有していなかった権利を得る取得時効と、

時間の経過によってそれまで有していたはずの権利を失う消滅時効とがある

 

 取得時効

 

物を一定期間継続して占有するとその物の権利を取得できること

時効の成立によって権利を取得する

 

下記に該当するものは時効取得できる

・所有権

・地上権

・地役権

・不動産賃借権

(継続的用益という外形的事実が存在し賃借の意思に基づくことが客観的にヒョイ右舷されているとき)

(他人の家に住み続け、そのか間も賃料を支払い続けているような時に賃借権の時効取得が認められる)

 

 

 

時効期間

 

民法 第162条】
①20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
②10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

・占有開始時に善意無過失の場合は10年

・善意有過失・悪意の場合は20年

この期間、占有を継続すると権利を得ることができる

 

※占有開始時期には善意無過失だったが、途中で他人のものだと気づいた(悪意)場合

占有開始時に善意無過失であれば、時効期間は10年

 

※占有の開始時期から期間を計算する、この計算を始める時点を「起算点」という

  

 

 

所有権の取得時効

民法 第162条】
①20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
②10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

 

 ※「所有の意志をもって」とは、あくまでも自分の所有物であるかのように平穏かつ公然と占有するケースを表す

所有の意思の有無は主観的にではなく、占有取得の原因事実により、外形的・客観的に判断される

(例)

売買契約で家を取得した場合

客観的にその家を「自分のもの」として持つことになる

これは「所有の意思がある」と判断できるので、取得時効にかかる

 

 

※借りて住んでいる場合は所有権の取得時効には含まれない

(例)

Bの家をAが借りている場合

これは借りているのであり、占有しているわけではない

客観的に「他人のもの」として持っている状態

これは「所有の意思がある」とは言えないので、Aは所有権を時効取得することはできない

 

※所定の年数を自身で占有し続けなければならないという決まりはなく、他人に貸していたとしても占有を継続したものとみなされる

 

※占有を継続すれば取得時効が成立するので、一筆の土地の一部のみの取得時効も認められる

 

 

占有の承継

AはC所有の土地について、善意無過失で占有を開始した

7年後に、AはBにこの土地を売却した

Bはこの土地が、実はCの所有であることを知っていた(悪意)

Bはあと何年この土地の所有を続ければ、時効取得することができるか??

⬇︎

・占有開始時に善意無過失の場合は10年

・善意有過失・悪意の場合は20年

 時効期間は上記のように定められているので、Bは占有時に悪意であるので、Bの占有だけを考えると20年間が必要

⬇︎

しかし、Bより前の占有者Aからの占有をBが引き継いでいる状態なので、

BはAの占有期間も合わせて主張することができる

 

※占有を承継するときは、その瑕疵も一緒に引き継ぐ

ここでいう「瑕疵」は善意無過失や悪意等のこと

 

Aは占有開始時に善意無過失のため、BはAが占有開始時の善意無過失と、Aが占有していた期間の7年を承継することになる

善意無過失の場合の時効取得は10年間なので、Bはあと3年占有すれば、取得時効が完成する(Aが占有していた7年間と合わせて10年となる)

 

 消滅時効

 

時間の経過によって、ある権利が消滅してしまうことを指す

債権と所有権以外の財産権が、時効により消滅する

 

下記のものは時効により消滅する

・金銭債権等を請求する権利(債権)

・地上権

・地役権

・不動産賃借権

一般的に10年が経つと消滅時効が成立する

 

一定期間が経過しただけでは、時効の効果は発生しない

当事者の援用が必要(時効利益を受ける意思表示が必要)

 

 

※所有権は消滅時効にかからないので注意

⬇︎ 

(具体例)

本人Aが自宅ではない、実家のある土地を相続した

Aはこの土地を10年間見に行かずに放置していたが、それによって土地の所有権が消えることはない

(毎年固定資産税も課税されており、ただ使用していないだなので、所有権は土地所有者のAにあるのが当然)

 

もし所有権に時効があって、その土地を使用していなければ所有権が消滅するとなれば、公平性が保たれない

 

このような状況があるため、所有権は消滅時効にかからない

 

 

※所有権が消滅する場合

⬇︎

本人Aが、上記の土地を30年間放置していた

その間にBがその土地に建物を建てて20年以上住み続けたため、取得時効が完成した

Bの取得時効の完成により、Aの所有権は奪われることになる

 

※この場合は、あくまでBの取得時効の成立によって、Aの所有権が奪われたのであって、

消滅時効によって所有権が消えたのではない

 

「所有権は消滅時効にかからない」という意味を理解しておくこと

 

 

消滅時効の時効期間と起算点

どんな権利が、どれぐらいの期間で消滅するのか

 

 

債権が消滅する時効期間

 

原則

①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年

②権利を行使することができる時から10年

 

※5年か10年のどちらか短い方

 

例外

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求は

債権者が権利を行使できることを知った時から5年

権利を行使することができる時から20年

 

※5年か20年のどちらか短い方

 

 

債権又は所有権以外の財産権が消滅する時効期間

(地上権、永小作権、抵当権等)

権利を行使することができる時から20年

 

※前述の通り、所有権は消滅時効にかからない、かかるのは取得時効のみ

 

※抵当権は、債務者および抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない

 

※権利を行使できる時からカウントするのはなぜか??

権利を行使できるのに、それをしないのは「権利の上に眠っている」と言える

権利の上に眠っている人は保護するに値しないと判断されるので、いつから眠っていたかが基準になる

 

 

いつから権利を行使できるか

・確定期限付きの債権(10月1日に代金を支払う)

→ 期限が到来したとき

 

・不確定期限付きの債権(父が死んだら代金を支払う)

→ 期限が到来したとき

 

停止条件付きの債権

→ 条件が成就したとき

 

・期限の定めのない債権(売買の目的物の引き渡し時期を定めていない)

→ 債権が成立・発生した時

 

 

判決で確定した権利の消滅時効

 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利の消滅時効期間mは、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、確定の時に弁済期の到来していない債権を除いて10年になる

 

判決などの後、それを放置した場合に、短い期間で時効消滅を認めると、

せっかく訴訟を提起して、裁判官が判断を下したことが無駄になってしまうため、10年という長い期間が定められている

 

 

時効の完成猶予と更新

 

①時効の完成猶予とは

その期間は時効が完成しない

時効の進行中に訴えが提起され、権利行使の意思が明らかになった場合等に認められる

 

・時効の完成猶予の事由

裁判上の請求・仮差し押さえ・催告・協議を行う旨の合意

これらの手続事由が終了するまでの期間は、時効は完成しない

催告の場合、催告の時から6ヶ月経過するまでは、時効は完成しない

 

 

②時効の更新

時効が新たにその進行を始めること

確定判決によって権利が確定した場合等に認められる

更新が生じると、それまで進行していた時効期間はリセットされる

 

・更新事由

裁判上の請求や承認などがある

承認(借金があることを認めた)の場合、時効は承認の時から新たにその進行を始める

 

 

 場合別の時効の完成猶予と更新事由

 

裁判上の請求・支払い督促等

・時効の完成猶予

裁判上の請求等の手続事由が終了するまでの間は、時効は完成しない

(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合は、その終了の時から6ヶ月を経過するまでは時効は完成しない)

 

・時効の更新

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定した時は、時効は、裁判上の請求等の事由が終了した時から、新たにその進行を始める

 

 承認

・時効の更新

 権利の承認があった時は、時効は、その時から新たにその進行を始める

※承認をするには、相手がたの権利についての処分につき、行為能力の制限を受けていないこと、又は権限があることを要しない

 

 仮差し押さえ等

・時効の完成猶予

仮差し押さえ等が終了した時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効は完成しない

 

催告

・時効の完成猶予

催告の時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効は完成しない

催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しない

 

協議を行う旨の合意

・時効の完成猶予

権利についての協議を行う旨の合意が、書面又は電磁的記録でされた時は、一定の時までの間は時効は完成しない

一定の時(例)→合意があった時から1年を経過した時

 

未成年者 

・時効の完成猶予

(例)

時効の期間の満了前6ヶ月以内の間に、未成年者又は成年被後見人法定代理人がいない時は、その未成年者が行為能力者となった時、又は、法定代理人が就職した時から6ヶ月を経過するまでの間は、その未成年者等に対して、時効は完成しない 

 

 時効完成の効力

 

1 時効の利益を受けるためには

時効の援用が必要

時効の援用→私は時効の効果を受けますと告げること

 

※時効の援用ができるのは当事者のみ

※時効の恩恵を受けるかどうかは、当事者の意思に任されている

 

消滅時効の場合に援用ができる人は??

権利の消滅について政党な利益を有する者が援用できる

「債務者」

「保証人」

「物上保証人」その債権の担保として抵当権が設定されている場合

「第三取得者」その債権の担保として抵当権が設定されている場合

 

 

消滅時効の場合に援用ができない人は??

後順位抵当権者は先順位抵当権者の非担保債権の消滅時効を援用することができない

 

 

 

2 時効の援用の効力はいつから発生するか

起算日に遡って発生する

(例)

取得時効の場合なら、要件を満たす「占有を始めた時」から、時効取得者のものになる

 

 

3 時効の利益の放棄

「時効の利益を受けません」と告げること

 

・時効の完成前に放棄することはできない

時効制度が無視されることのないように、時効の完成前には、時効の利益の放棄はできないことになっている

 

※時効完成前に、特約として「時効の利益を放棄すること」を約束していても、その特約は無効

 

 

・時効の完成後に放棄をする時は

時効の完成後に、当事者が時効の利益を放棄することが原則

その効果は、各当事者の意思が尊重されることが重要視されている

そのため、時効の利益の放棄の効果は、放棄した者との関係でのみ生じる

消滅時効の完成後に、重たる債務者が時効の利益を放棄した場合でも、別途、保証人は時効を援用することができる

 

 

 

4 消滅時効の完成後に債務者が債務の承認をした場合

消滅時効の完成後に、債務者が債務の承認をした場合は、もし債務者が時効完成の事実を知らなかったときでも、信義則上、消滅時効を援用することは許されない

この場合、債権者は「債務者はもう時効の援用をしないだろう」と考えるのが普通だから

⬇︎

消滅時効が完成した後に

債務者は自身の債務を承認した(お金を返すなどの責任があることを認めた)

債務者が時効が完成して、もう支払いをしなくてもいいという事実を知らなくても、

債権者の方は、「債務者は自身には支払いをする義務があると認識している、支払いをするつもりがある」と判断するので、

後になって「やはり時効が完成していたから、支払いたくない」と債務者が主張することは認められていない

 

 

民法等4−3 贈与契約

 

贈与契約とは

 他人から物をタダでもらう場合も、贈与契約という契約を結んだ結果、物を取得することになる

もらう側にとっては無償の契約

契約成立の原則通り諾成契約

書面は不要 

 

贈与契約の性質

 

 無償で与える契約が、贈与契約の特徴

 

(1)書面によらない、口約束でした贈与は、履行の終わった部分をのぞいて、各当事者が解除することができる

 

履行が終わった部分や、書面で行った場合は、贈与する意思がはっきりしているため解除はできない

 

 

(2)タダであげるので、贈与者(あげる人)は、原則として、目的物が特定された時の状態で引き渡せば、受贈者(もらう人)から担保責任を問われない

 

ただし「もらう人も一定の負担を負う」という負担不贈与の場合は、贈与者は、その負担の限度で、売主と同様の担保責任を負う

 

 

民法等4−2 請負契約

 

請負契約とは

家を作って欲しい注文者A

家の建築を頼まれた請負人B

 

請負契約とは、、、

注文者が請負人に対してある仕事を完成させるように依頼し

その仕事の結果に対して、報酬を与える契約のこと

 

請負契約の目的と本質は、、、

仕事を完成させること

 

(1)報酬支払い義務

請負契約が結ばれると、、、

注文者Aには報酬支払い義務が生じる

請負人Bには仕事完成義務が生じる

 

請負人Bは先に仕事を完成させ、その後に報酬を請求できる

目的物の引き渡しと報酬の支払い義務は同時履行の関係

 

(2)割合的報酬請求権

仕事が完成しなかった場合、請負人Bは全く報酬を得られない??

⬇︎

請負人Bには割合的報酬請求権が認められている

(部分的に報酬を請求できる)

 

①注文者の帰責事由なく仕事を完成することができなかった場合

②請負契約が仕事の完成前に解除された場合

 

上記に該当する場合、請負人は、すでに行った仕事の結果のうち、

可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、

(分割できる部分を注文者に引き渡し、それによって注文者が利益を得るとき)

その部分については仕事が完成したものとみなされるため、

請負人はその注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができる

 

 

(3)注文者の契約解除権 

注文者Aにとって建物が不要になってしまった場合

注文者Aは、請負人Bが仕事を完成させる前であれば、契約を解除することができる

 

※注文者Aからの契約解除によって、請負人Bに損害が生じた場合は、注文者Aは損害賠償をする必要がある

これが注文者の契約解除権

 

契約不適合の場合の請負人の担保責任

 請負人が契約内容に適合しないものを作った場合に、請負人が負わなければならない責任

 

1 目的物の種類・品質に関する担保責任

請負契約は有償契約なので、売買においての目的物の契約不適合の規定が準用されている

仕事の目的物が、種類品質に関して契約の内容に適合しない場合は、注文者は請負人に対して下記の3つを請求できる

 

(1)追完請求権

注文者は原則、請負人に対して、目的物の補修などの履行の追完を請求することができる

 

※契約不適合が重要なものでないのに、補修にかかる費用が可分すぎるなどの場合

→取引上の社会通念に照らして補修が不能であるときは、追完請求は認められない

 

 

(2)報酬減額請求権

注文者が相当の期間を定めて履行の追完の催告をしたが、その期間内に履行の追完がない場合

注文者は原則として、その不適合の程度に応じて報酬の減額請求をすることができる

 

 

(3)損害賠償請求権・契約解除権

①注文者は原則として、契約内容の不適合を理由に、請負人に対して損害賠償請求をすることができる

 

・注文者ができること

追完請求の代わりに損害賠償請求をすることができる

追完請求とともに損害賠償の請求をすることができる

 

(例)

修補が不能、直すことができない場合は、修補に代わる損害賠償請求が認められる

 

 

②注文者が請負人に修補するように催告したが、相当期間を経過しても修補されない場合は、注文者は原則として、請負契約を解除することができる

 

(例)

契約内容に適合しないために、契約の目的を達成できない場合

→催告なしで解除することができる(無催告解除)

 

 

2 担保責任の制限

 

注文者が自ら提供した材料や指示のために、仕事の目的物が契約内容に適合しないものになってしまった場合

⬇︎ 

請負人は担保責任を負わない

 

※ただし請負人が、その材料や指示が不適合であることを知りながら、ちゅうもんしゃにい告げなかった時は、請負人は担保責任を負う

 

 

3 担保責任の期間の制限

 担保責任の期間の制限→1年

 

・注文者が契約不適合を知った時から1年以内に、その旨を請負人に通知しなかった場合

注文者はその不適合を理由として、履行の追完請求・報酬の減額請求・損害賠償請求・契約の解除をすることはできない

 

※仕事の目的物を注文者に引き渡した時などに、請負人がその不適合を知っていた、または重大な過失によって知らなかった時は、この1年という期間の制限を受けない

(1年経過していても、注文者は請負人に対して上記の請求ができる)

 

 

4 特約について

 「仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合における担保責任を負わない」という特約

当事者間において合意で決めたことは有効

※請負人が知っていたにもかかわらず告げなかった事実等については、請負人はたとえ特約があっても、担保責任を負わなければならない

 

民法等4−1 委任契約

委任契約にはどのような権利や義務が発生するのか

どのように委任契約が終了するのか

 

委任契約

AはBに、この土地を売って欲しいと依頼した

依頼したA→委任者

依頼を受けたB→受任者

 

土地の売買契約などの法律行為を依頼する契約のことを委任契約という

(仕事を頼み、頼まれる契約)

 

準委任契約

土地の管理等の事実上の行為を依頼すること

 

委任契約についての事柄は、準委任契約にもそのまま当てはまる

  

受任者の義務

 

1 善管注意義務

 

善管注意義務とは

善良なる管理者の払うべき注意義務

より慎重に注意を払う義務を負うということ

職業や地位に応じて相応の思慮分別を要求される義務と言い換えることができる

職業や地位に応じてというのは、客観的な判断による

 

(例)

不動産(アパート)の賃借人(借りた人)は、借りた不動産に対して善管注意義務を負う

これはアパートの部屋を使用する際に、自分の持ち物と同じような雑な扱いをしてはいけないということで、他人から借りている以上、慎重に注意を払って使わなければならないという義務

 

宅建で自己の財産に対するのと同一の注意が出題されるのは「無償寄託」についてのみ

 

 

・無償寄託とは

報酬を受け取らずにタダで何かを預かるという契約

 

(例)

引っ越しが済むまで大量の本を預かっていてほしいと友人が依頼してきた

このとき預かった側は、自分の持ち物と同様の注意を払って管理をすればいい

したがって、雨が続いても本にカビが生えないようわざわざ風通しの良い場所に移動しなくてもいいし、臭いがうつらないよう特別に何か配慮しなければいけないというわけでもない

(通常自分の本に対して、そこまで気を配ることはないため)

 

無償で預かってあげている以上、さらに注意まで払う義務を課すのは、預かった側にとってあまりにも酷だからという理由による

 

一方「有償」で寄託を受けた場合は、自己の財産に対するのと同一の注意は適用されず、善管注意義務が適用されることになる

 

 

・委任における善管注意義務

受任者の義務として、善管注意義務を負う

「委任は無償でも善管注意義務を負う」

 

「寄託」では、有償の場合のみ善管注意義務を負う

しかし委任においては、そもそも報酬が支払われないものと解されている

 

❝1.受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。(以下省略)民法第648条(受任者の報酬)❞

 

もともと無償の場合を想定して善管注意義務が課されているため、無償でも有償でも、委託の場合は善管注意義務を負うこととなる

 

 

・使用貸借で借り受けた場合の善管注意義務

使用貸借(無償)で借り受けた場合も、善管注意義務を負う

 

賃貸借の考えでは借主の主な義務

①賃料支払い

善管注意義務

③用法順守義務

④目的物返還義務

 

普通の貸借はすべての義務を負う

使用貸借は①賃料支払い以外のすべての義務を負う

もともと善管注意義務は法律の概念で義務化されていたため、使用貸借でも善管注意義務となる

 

2 自己執行義務

受任者は、委任事務を自ら行わなければならないのが原則

受任者は委任者の許諾を得た時、またはやむを得ない事由がある時でなければ、

復受任者を選任することができない

 

 

3 報告義務

受任者は委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理状況を報告し

委任事務終了後は遅滞なく、その経過や結果を報告しなければならない

 

 

4 受取物引渡義務

受任者は、委任事務を行うにあたって受け取った金銭・物等を委任者に引き渡さなければならない

委任者のために受任者の名前で取得した権利も移転しなければならない

 

※金銭、物、権利は全て委任者のものだから

 

 

5 金銭消費責任

受任者は、委任者に引き渡すべき金銭を自分のために使ったときは

その使った時からの利息をつけて、さらに損害があれば損害賠償もした上で引き渡さなければならない

 

受任者の権利

 

1 特約があれば報酬を請求できる権利

(1)報酬請求権 

原則、委任契約は無償

「報酬あり」の特約があれば、受任者は委任者に報酬を請求することができる 

 

(2)報酬の支払い時期

特約で報酬ありの委任契約をした場合

報酬の支払い時期は2パターン

 

①履行割合型

事務処理を行ったことに対して報酬が支払われる

当事者間に特に定めがなければ、報酬の支払いは後払い

 

②成果完成型

事務処理により得られた成果に対して報酬が支払われる 

その成果が引き渡しが必要なものである場合は、受任者は、その成果の引き渡しと同時に、委任者に対して報酬の支払いを請求することができる

 

 

2 費用償還請求権・費用前払請求権

・費用償還請求権

必要費を受任者が委任者の代わりに(立替えて)支払っている場合 

この費用は委任者に対して請求できる

支払った額と、支払いをした日からの利息を償還請求できる

 

・費用前払請求権

 受任者が委任事務のための費用を必要とする場合

受任者は委任者に対して必要費の前払を請求できる

 

 

3 損害賠償請求権

 受任者が委任事務処理をするにあたって、自分に過失がないのに損害を受けた場合

受任者は委任者に対して、その損害の賠償を請求することができる 

 

この場合の委任者の義務は無過失責任

※委任者に落ち度がない場合でも、責任を負わなければならない

 

委任契約の終了事由

 

1 告知による契約解除による終了

委任契約は委任者と受任者の信頼関係で成り立つ

 

信頼関係が破綻した場合の委任契約は

・各当事者が

・いつでも

・告知によって

契約解除することができる

 

※委任契約の解除は、その解除の効果は過去に遡及しない、将来に向かってのみ、その契約の効果がなくなる

(すでに起こっていることに対しては解除の効果が及ばない)

 

 

基本的にはいつでも解除できるが、下記に当てはまる場合は、損害賠償をしなければならないことがある

①相手方にとって不利な時期に契約解除した場合

②委任者が受任者の利益をも目的とする場合

 

※ただしやむを得ない事情があって解除する場合は、この2点に該当していても、損害賠償をせずにすむこともある

 

 

2 委任者・受任者に一定の事由が生じた場合の契約終了

 

 ※任意代理の消滅事由と同じ

 

・委任者が

死亡したら契約終了

破産手続き開始が決定したら契約終了

 

・受任者が

 死亡したら契約終了

破産手続き開始が決定したら契約終了

後見開始の審判を受けたら契約終了