民法等4−1 委任契約
委任契約にはどのような権利や義務が発生するのか
どのように委任契約が終了するのか
AはBに、この土地を売って欲しいと依頼した
依頼したA→委任者
依頼を受けたB→受任者
土地の売買契約などの法律行為を依頼する契約のことを委任契約という
(仕事を頼み、頼まれる契約)
準委任契約
土地の管理等の事実上の行為を依頼すること
委任契約についての事柄は、準委任契約にもそのまま当てはまる
1 善管注意義務
・善管注意義務とは
善良なる管理者の払うべき注意義務
より慎重に注意を払う義務を負うということ
職業や地位に応じて相応の思慮分別を要求される義務と言い換えることができる
職業や地位に応じてというのは、客観的な判断による
(例)
不動産(アパート)の賃借人(借りた人)は、借りた不動産に対して善管注意義務を負う
これはアパートの部屋を使用する際に、自分の持ち物と同じような雑な扱いをしてはいけないということで、他人から借りている以上、慎重に注意を払って使わなければならないという義務
宅建で自己の財産に対するのと同一の注意が出題されるのは「無償寄託」についてのみ
・無償寄託とは
報酬を受け取らずにタダで何かを預かるという契約
(例)
引っ越しが済むまで大量の本を預かっていてほしいと友人が依頼してきた
このとき預かった側は、自分の持ち物と同様の注意を払って管理をすればいい
したがって、雨が続いても本にカビが生えないようわざわざ風通しの良い場所に移動しなくてもいいし、臭いがうつらないよう特別に何か配慮しなければいけないというわけでもない
(通常自分の本に対して、そこまで気を配ることはないため)
無償で預かってあげている以上、さらに注意まで払う義務を課すのは、預かった側にとってあまりにも酷だからという理由による
一方「有償」で寄託を受けた場合は、自己の財産に対するのと同一の注意は適用されず、善管注意義務が適用されることになる
・委任における善管注意義務
受任者の義務として、善管注意義務を負う
「委任は無償でも善管注意義務を負う」
「寄託」では、有償の場合のみ善管注意義務を負う
しかし委任においては、そもそも報酬が支払われないものと解されている
❝1.受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。(以下省略)民法第648条(受任者の報酬)❞
もともと無償の場合を想定して善管注意義務が課されているため、無償でも有償でも、委託の場合は善管注意義務を負うこととなる
・使用貸借で借り受けた場合の善管注意義務
使用貸借(無償)で借り受けた場合も、善管注意義務を負う
賃貸借の考えでは借主の主な義務
①賃料支払い
③用法順守義務
④目的物返還義務
普通の貸借はすべての義務を負う
使用貸借は①賃料支払い以外のすべての義務を負う
もともと善管注意義務は法律の概念で義務化されていたため、使用貸借でも善管注意義務となる
2 自己執行義務
受任者は、委任事務を自ら行わなければならないのが原則
受任者は委任者の許諾を得た時、またはやむを得ない事由がある時でなければ、
復受任者を選任することができない
3 報告義務
受任者は委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理状況を報告し
委任事務終了後は遅滞なく、その経過や結果を報告しなければならない
4 受取物引渡義務
受任者は、委任事務を行うにあたって受け取った金銭・物等を委任者に引き渡さなければならない
委任者のために受任者の名前で取得した権利も移転しなければならない
※金銭、物、権利は全て委任者のものだから
5 金銭消費責任
受任者は、委任者に引き渡すべき金銭を自分のために使ったときは
その使った時からの利息をつけて、さらに損害があれば損害賠償もした上で引き渡さなければならない
1 特約があれば報酬を請求できる権利
(1)報酬請求権
原則、委任契約は無償
「報酬あり」の特約があれば、受任者は委任者に報酬を請求することができる
(2)報酬の支払い時期
特約で報酬ありの委任契約をした場合
報酬の支払い時期は2パターン
①履行割合型
事務処理を行ったことに対して報酬が支払われる
当事者間に特に定めがなければ、報酬の支払いは後払い
②成果完成型
事務処理により得られた成果に対して報酬が支払われる
その成果が引き渡しが必要なものである場合は、受任者は、その成果の引き渡しと同時に、委任者に対して報酬の支払いを請求することができる
2 費用償還請求権・費用前払請求権
・費用償還請求権
必要費を受任者が委任者の代わりに(立替えて)支払っている場合
この費用は委任者に対して請求できる
支払った額と、支払いをした日からの利息を償還請求できる
・費用前払請求権
受任者が委任事務のための費用を必要とする場合
受任者は委任者に対して必要費の前払を請求できる
3 損害賠償請求権
受任者が委任事務処理をするにあたって、自分に過失がないのに損害を受けた場合
受任者は委任者に対して、その損害の賠償を請求することができる
この場合の委任者の義務は無過失責任
※委任者に落ち度がない場合でも、責任を負わなければならない
1 告知による契約解除による終了
委任契約は委任者と受任者の信頼関係で成り立つ
信頼関係が破綻した場合の委任契約は
・各当事者が
・いつでも
・告知によって
契約解除することができる
※委任契約の解除は、その解除の効果は過去に遡及しない、将来に向かってのみ、その契約の効果がなくなる
(すでに起こっていることに対しては解除の効果が及ばない)
基本的にはいつでも解除できるが、下記に当てはまる場合は、損害賠償をしなければならないことがある
①相手方にとって不利な時期に契約解除した場合
②委任者が受任者の利益をも目的とする場合
※ただしやむを得ない事情があって解除する場合は、この2点に該当していても、損害賠償をせずにすむこともある
2 委任者・受任者に一定の事由が生じた場合の契約終了
※任意代理の消滅事由と同じ
・委任者が
死亡したら契約終了
破産手続き開始が決定したら契約終了
・受任者が
死亡したら契約終了
破産手続き開始が決定したら契約終了
後見開始の審判を受けたら契約終了