民法等2−5 連帯債務と保証
連帯債務と保証という、人を的にした担保物権について学習する
・債権者は1人だが、債務者が複数人いる
・1人の債務者から債権が回収できなくても、他の債務者から回収できる
連帯債務
保証
連帯保証
共同保証
複数の債務者が同一内容の債務を、それぞれ独立に負担し、その1人が弁済すれば他の債務者も債務を免れる関係
売主A(1人)
買主B/C/D(複数人)
連帯債務の効力
・原則
相対効…連帯債務はそれぞれ独立している
連帯債務者の1人について生じた事由は、原則として他の債務者に影響を及ぼさない
・例外
絶対効…以下の事由については、1人について生じた事由が他の債務者にも影響を及ぼす
事由 | 具体例 |
---|---|
弁済 代物弁済 供託 |
債務者の1人であるBが売主Aに弁済(1,200万円すべてを返済)した場合、C/Dの2人は1,200万円を支払う必要はない 売主Aは代金をすべて回収したため、これ以上得る必要はない |
更改 |
売主AがBとの合意により1,200万円の債権を、B所有の土地の引渡に更改すると、C/Dの債務は消滅する その後BはCとDに求償することができる |
混同 |
Bが売主Aを相続したとき、Bの債務は混同によって消滅する 同時にC/Dの債務も消滅する ただし、Bは弁済したとき同様、C/Dに対して求償権を有する |
相殺 |
Bが売主Aに債権1,200万円を持っていて、この1200万円とAの債権を相殺すると、C/Dについても債務が消滅する また、Bが相殺を援用しない間は、C/DはBの負担部分400万円についてのみ債権者に対して履行を拒むことができる |
※連帯債務者のうちの1人について無効・取消の原因があっても、他の債務者に影響しない
※連帯債務者の1人が破産した場合、債権者は全額について破産財団の配当に加入することができる
債務の承認とは、、、
時効によって利益を受ける債務者が債権者に対して、
債務が存在していることを認めることをいう
その効果として時効が中断する
(例)
売主Aは1,200万円の別荘を、B/C/Dの3人売ることにしたが、代金の支払いに不安がある
確実に代金を払ってもらうために、Aはどうすればいいか
↓
本来、3人で1,200万円のものを購入したのだから、1人400万円ずつ支払えば良いという考え方もできる
↓
しかし、AとBとの間に無効・取消原因があった場合、AはC/Dからの800万円しか得られないという事態が考えられる
↓
そこで法は、それぞれの債務が独立し、
かつ、B/C/Dのそれぞれが1,200万円の責任を負う連帯債務という制度を設けた
債権を強めるために担保をとること
(例)
売主A ←(兄弟)→ 買主B
Aは、Bから「家を売ってくれ」と頼まれた
AはBの支払い能力に不安がある
しかし、兄弟なので拒むわけにもいかない
↓
こうした場合、AはBから何か担保を取ることで不安を解消できる
↓
しかし、Bには担保になるような財産がない
↓
保証人をたててもらう
結論
AはBに対する代金債権について、お金持ちのCに保証人になってもらえば良い
これが保証債務
保証契約の成立
1 保証契約は、書面または電磁的記録でしなければ、その効力を生じない
2 保証契約は、債権者と保証人との間で締結されるものであるため
主たる債務者と連絡をとらず、主たる債務者からの委託を受けないまま
債権者に対して保証したとしても、保証契約は有効に成立する
保証債務の範囲
1 主たる債務に関する利息・違約金・損害賠償など
元本だけでなくすべての主たる債務に従たるものも含む
2 ただし、保証人は自己の保証債務についてのみ
違約金・損害賠償の額を定めることができる
保証債務の性質
附従性
1 主たる債務が成立しなければ、保証債務も成立しない2 主たる債務が消滅すれば、保証債務も消滅する
3 主たる債務より保証債務が重くなることはない
重いときは主たる債務と同じになる
4 主たる債務が軽く変更されれば、保証債務も軽くなる
5 主たる債務が重く変更されても、保証債務は重くならない
6 主たる債務に対する請求、その他の時効の中断は保証債務についても効力を生じる
随伴性
債権が移転すると保証債務も移転する
補充性
1 催告の抗弁権…まず主たる債務者に請求せよ、という権利2 検索の抗弁権…まず主たる債務者の財産につき執行せよ、という権利
<連帯保証との違い>
連帯保証については、上記2つの抗弁権はない
保証人の資格
・原則
制限はない
・例外
保証人を立てる義務がある場合には能力者であり、かつ、弁済の資力を有することが必要
※保証人が弁済の資力を欠くに至った場合、債権者は保証人の変更を請求できる
(ただし保証人が債権者の指名による場合は、この変更請求は認められない)
※保証人は主たる債務者の委託を受けなくても、またその意思に反してもなることができる
保証人の権利
保証人は主たる債務者の有する抗弁権を援用することができる
ただし、解除権は行使できない
(例)
2 時効の援用
(例)
3 同時履行の抗弁権
(例)
保証人への免除
・債権者が保証人の債務を免除した→その効力は主たる債務者に及ばない
(売主Aが保証人Cの債務を100万円分免除したが、買主Bは免除されないので、全額支払わなければならない)
・債権者が債務者の債務を免除した→附従性により保証人の債務も免除される
(売主Aが買主Bの債務を100万円分免除したら、保証人Cの債務も免除されるので、100万円分は支払いをしなくて良い)
連帯保証と連帯債務の違い
連帯保証と連帯債務の違いを考える上でキーワードとなるのが
「分別の利益」と「求償権」
分別の利益・求償権とは
分別の利益とは、、、
保証人が債務を等しい割合で負担することのできる利益
ここで言う求償権とは、、、
自分が弁済した際、他の連帯保証人に対し、弁済した分を請求することができる権利
・連帯保証には「分別の利益がない」ため、自分の負担分を超えて弁済しなければ、他の連帯保証人には求償することはできない(求償権がない)
・連帯債務には「分別の利益がある」ため、自分の負担分を超えない範囲で弁済しても、他の連帯債務者に対して求償することができる(求償権がある)
共同保証とは、同一の債務について、二人以上が保証人となること
(例)
AがBから1000万円を借り、CとDが保証人になった
この場合、共同保証ということになる
共同保証では、「分別の利益」というルールがある
分別の利益
上記例でいうと「主たる債務者がA」「債権者がB」「保証人がCとD」となる
もし、C、Dが普通保証人の場合、主たる債務者の債務である1000万円を保証人の頭数である「2」で割って、500万円分だけ負担すればよいというのが、「分別の利益」
もし、CもしくはD、または両者が連帯保証人であれば、連帯保証人は分別の利益を有さないため、主たる債務者の債務額である1000万円を負う
保証契約で抗弁権がないのは、「催告・検索」の抗弁権
「相殺」の抗弁権は、連帯保証契約でも援用できる
連帯保証契約では、債務に関する抗弁はできないが、債務者の「債権」に関しても、その権利を活用できる
連帯保証人に関しても同じ扱いか?
保証人、連帯保証人ともに、主たる債務者に通知すれば、保証人には通知しなくても債権を主張できる
催告の抗弁権と検索の抗弁権は連帯保証についてないということですが、連帯債務にもないですよね。
これは、単なる保証人にしかないということでしょうか?
まず、連帯保証についてですが、これは主たる債務者が弁済の資力を欠くに至った場合、債務を返済する責任が生じる
一方連帯債務ですが、こちらは、一緒に債務を背負っているということを指しますので、主たる債務者と同様に、債務を弁済する責任がある
また、ご理解頂いている通り 催告の抗弁権と検索の抗弁権は、保証人にのみ認められている